コーポレートガバナンスのわかりやすい意味・目的・具体例

このページでは、「コーポレートガバナンスとは何か」について、その意味や目的をやさしく解説します。

人によってさまざまな解釈がある議論は、由来までさかのぼって考えれば解決しやすいです。
ですのでここでは、「会社法」まで読み解いてみます。

イメージしやすいよう、トヨタなど具体的な例も紹介します。

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスの基本的な知識を解説します。

まずは日本を代表する一流企業が掲げる、コーポレートガバナンスを紹介します。

トヨタのコーポレートガバナンスの例

トヨタはシンプルに考え方を示しており、企業価値の向上を重要な目的に、株主や顧客と良い関係を築く取り組みだと言っています。

基本的な考え方
トヨタは、持続的な成長と長期安定的な企業価値の向上を経営の重要課題としています。
その実現のためには、株主やお客様をはじめ、取引先、地域社会、従業員などの各ステークホルダーと良好な関係を築くとともに、お客様に満足していただける商品を提供し続けることが重要と考え、コーポレートガバナンスの充実に取り組んでいます。

(引用)トヨタ自動車 HP 「ガバナンス―コーポレートガバナンス

パナソニックのコーポレートガバナンスの例

パナソニックは創業者の松下幸之助の時代から、会社は「社会の公器」と明言しており、世に貢献し従業員も大切にする日本型企業の典型です。

ポイントは、「世界中の人々」「社会」を最重視する全方位的な考えです。
そのうえで、トヨタと同じく企業価値向上のために株主・顧客との関係に触れています。

コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
当社は、創業以来、「事業活動を通じて、世界中の人々のくらしの向上と、社会の発展に貢献する」という経営理念に基づき、事業活動を行っています。

また、「企業は社会の公器」という基本理念に基づき、株主や顧客をはじめとするさまざまなステークホルダーとの対話を通じて説明責任を果たし、透明性の高い事業活動を心がけ、公正かつ正直な行動を迅速に行っていくことで、企業価値を高めていくことが重要であると考えています。

当社は、コーポレート・ガバナンスをそのための重要な基盤と認識し、グループ全体に関わる重要な業務執行を決定し、取締役の職務の執行を監督する取締役会と、取締役会から独立し、取締役の職務の執行を監査する監査役・監査役会からなる監査役制度を基礎として、実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制の構築・強化に努めています。

また、コーポレート・ガバナンスの充実を図るため、以下の取り組みを行っています。

  • 株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
  • 従業員、顧客、取引先、地域社会などのステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果が企業の持続的な成長につながることを認識し、ステークホルダーとの適切な協働に努める。
  • 会社情報を適切に開示し、企業経営の透明性を確保する。
  • 取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、企業戦略等の大きな方向性を示し、適切なリスクテイクを支える環境整備を行い、独立した客観的な立場から経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行う。
  • 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、株主と建設的な対話を行う。

(引用)パナソニックHP「経営の考え方・コーポレートガバナンス

トヨタは考え方を比較的シンプルに表現して、詳細は「コーポレートガバナンス報告書」を公開していますが、パナソニックは非常に具体的です。

この1ページだけでも、読み切るのが大変なほど内容が充実しています。

どちらにも共通しているのは、「企業価値向上」と「株主・顧客、その他ステークホルダーとの関係」です。

コーポレートガバナンスの意味

個別企業の基本的な考え方を見たところで、コーポレートガバナンスの定義を2つ紹介します。

株式会社がよりよく経営されるようにするための諸活動とその枠組みづくり
会社、社長、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)などの責任者を誰が、どのように選び、そのパフォーマンスを誰が評価して、どういう基準で、そしてどういう手続きで、追い出せるかにかかわる、よりよい企業経営が執行されるようにするための方法、制度と慣行。

コーポレートガバナンスの最終的な目的とは、「経営が上手くいく」という一点に尽きます。

「その目的を実現するための経営の仕組み」がコーポレートガバナンスの意味するところです。

ステークホルダー(会社にかかわる人)の願いは1つ、

「会社の経営が上手くいき利益を出し存続し続ける」

もし、不適切な経営がされている時は、それを自ら発見し、責任を明確にして再発防止に努めなければなりません。
このための機能と仕組みこそがコーポレートガバナンスです。

コーポレートガバナンスの仕組み

「よりよい企業経営」に必要な仕組みにはポイントがあります。

評価

会社は、経営が上手くいっているのかどうか業績を評価する必要があります。
評価に応じて適切な報酬決定や人事を行います。

監査

また、不適切な経営がないかどうかの常日頃の監査が不可欠です。
極論はいざとなればダメな経営者を「クビ(任免)」にする目的の仕組みです。
そのような仕組みができており、運営もうまくいっている状態が望ましいです。

ステークホルダーへの配慮

コーポレートガバナンスは他の幅広い議論にもあてはまります。
会社は利潤さえ出し続けていればいいわけではありません。

会社には多くの種類の人が関わります。
まずは主体である株主で、シェアホルダー(=ストックホルダー)と呼びます。
そして他には経営者、従業員、顧客、取引先、債権者、などです。

関わる全ての人たちをステークホルダーといいます。
会社はこれらの関係者皆が安心感を持てるように、情報をオープンにするのも務めです。

環境や社会的影響への配慮、倫理的な行動は当然必要です。
他にも業界特有の風習なども、たくさんあるはずです。

「会社が利益を出し、出資してくれた株主に還元するだけ」で他の関係者に還元しないのでは、心情的には誰も納得しないでしょう。

コンプライアンスとの違い

コンプライアンスとは、法令やルールをしっかり守ることです。

あくまでもルールを守っているかどうかが基準であり、株主の価値を損なっていてもルール内ならコンプライアンスとしては問われることはありません。

トヨタ自動車の例をHPから引用してみます。

基本的な考え方
トヨタは基本理念の中で「内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民を目指す」としており、この理念を実践することがトヨタに期待された社会的責任を果たすことであり、コンプライアンスの確立につながるものと考えています。

(引用)トヨタ自動車 HP 「ガバナンス―コンプライアンス

コーポレートガバナンスの目的

ではコーポレートガバナンスのおおよその意味はわかったところで、コーポレートガバナンスの目的を解説します。

コーポレートガバナンスと株主

  • 「会社は株主のものか、それともステークホルダー全員のものか」
  • 「会社はだれのために存在するのか」

これらの議論はよく起こりますが、誰もが納得する答えを出すのは難しいです。

しかし、ステークホルダーの願いは共通しています。

あえて結論を先に言うと

「コーポレートガバナンスの目的は株主のため」

です。

「投資家が金儲けしたいための言い分だ」と言われそうですが、実は問題はそう単純ではありません。

市場の話だけでなく、さかのぼれば法律や歴史的な思想など、根深い理由があります。

グローバル基準だけでなく日本の法律も根拠
「欧米型は会社は株主(シェアホルダー)のもので、日本型では会社は関係者すべて(ステークホルダー)のものだ」といわれることがあります。

しかし、日本でも会社法金融商品取引法を紐解くと、「株主の利益保護が求められています。

たしかに、ステークホルダーや社会的・環境的への配慮は、社会の一員としての当然のマナーとして考えるべきです。

これからは社会の一員としての存在であるからには最重要な前提ですが、

「コーポレートガバナンスの前提はそれが目的ではなく、株主保護」なのです。

その根拠を示すために、少しだけ寄り道して資本主義の成り立ちや会社の仕組みを見てみましょう。

コーポレートガバナンスの根拠

コーポレートガバナンスについて論じる時の根拠になる法律は「会社法」です。

コーポレートガバナンスと会社法

私たちが上場会社の情報開示について考える時、適用されるのは「有価証券上場規程」です。

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これは厳密にいえば、法律ではなく証券取引所と上場企業との間で取り交わされた、上場契約の内容です。

憲法から下ってきてこの規程に至るまでの法律的な体系はこうなっています。

憲法>民法>会社法>金融商品取引法>有価証券上場規程

ポイントは会社法です。

民法から下にくだって会社法に行きます。
もちろん、民法の下にある法律は会社法だけでなく、労働法、商法、手形法、小切手法など様々です。

会社法は「自由に稼ぐ」目的の法律
民法と会社法の体系
民法に対する特別法の中でも、2つの性質のものに分かれます。

1つは「社会国家原理の推進」というもので、社会福祉や健康な生活の保全などです。
労働法がこれに当たります。

もう1つが、「自由国家原理の推進」というので、「稼ぎたい人が稼ぐための制度は用意するが、そうでない人にはそれを強制しない」というものです。

これにあたるのが、商法、手形法、小切手法、そして会社法です。

つまり会社法は、その上である民法によって、「自由に稼ぐ目的の法律」と位置付けられています。

そしてさらに見ると、会社法は「営利社団法人」たる会社を規制する特別法です。

つまり、利益追求の容認で、早い話が金儲け目的の制度です。

その下にある金融商品取引法有価証券上場規程も、その性格を受け継ぎます。

会社法とはコーポレートガバナンスの在り方を一部縛るものです。

会社法は株式会社の設立要件や組織体系などを規定しています。

取締役会、株主総会、監査役会の役割など、今まで議論してきた内容が細かく体系化されているのです。

となれば、

コーポレートガバナンスとは(株主でも経営者でも会社でも)誰かが金儲けする権利を妨げられないようにする目的の仕組みづくり

これが目的だと考えられます。

このように、コーポレートガバナンスの法的な裏付けは、実は会社法にあったのです。

「コーポレートガバナンスとは、誰かが金儲けを妨げられないことを目的とする仕組み作り」と法律から読み取れるわけです。

このページのはじめに、「コーポレートガバナンスの第一目的は経営が上手くいく仕組み」と言いました。

コーポレートガバナンスは株主の財産保護ことにつながります。
法律的な観点から見ても、その仕組みを整備することは筋が通ることなのです。

コーポレートガバナンスのまとめ
  • コーポレートガバナンスの目的は、株主保護のため
  • コーポレートガバナンスは、会社経営がうまくいない時にダメな経営者を監視し、クビにするための仕組み
  • 株主保護の観点は、会社法にも規定されている

(参考文献)

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