アキ
教授、よろしくお願いします!
アキ
中村教授
中村教授
中村教授
中村教授
また、具体的な数字や、直感的にわかるグラフも紹介するので、いま起こっていることがよくわかってもらえるのではないかと思っています。
アキ
アキ
目次
国家予算
中村教授
内部を見れば非常に多くを語ることができますが、ここでは特に重要な一般会計の内訳と、補正予算、そして日本財政を悩ませている社会保障関連に触れます。
- 一般会計
- 補正予算
- 社会保障費
- 社会保障給付費
一般会計(当初予算)
一般会計とは、国が一年で支出する予算です。
現在は100兆円ほど。
(引用)財務省「平成30年度一般会計歳出・歳入の構成」
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/01.pdf
国家予算の三分の一を占め、一番大きいのが社会保障で32.9兆円です。
これはダントツに大きいビッグキーワードなので後の項目で解説しましょう。
- 社会保障…32.9兆円
- 公共事業…5.9兆円
- 文教科学…5.3兆円
- 防衛費…5.1兆円
- その他…9.3兆円
- 地方交付税交付金…15.5兆円
- 国債費…23.3兆円
これらの予算を聞いてもイメージしづらいかもしれませんが、例えばトヨタ自動車(従業員37万人)の売上高が29兆円ほど、日立製作所(30万人)が9兆円、イオン(50万人)が8兆円、ソニー(11万人)7兆円と比べてみると良いかもしれません。
防衛費
防衛費は40%が人件費・食料費です。
60%がヘリ、戦闘機・車両などの防衛装備品や、在日米軍駐留経費などの物件費です。
防衛費は年々増加傾向でGDP1%程度が目安とされています。
(引用)防衛省「我が国の防衛と予算 平成31年度概算要求の概要」
http://www.mod.go.jp/j/yosan/2019/gaisan.pdf
近隣諸国や米国と比べると対GDP比率が低く、現場では圧迫されているようです。
自衛隊は人手不足で、たまに航空機やヘリの機体から部品が落下するニュースがありますが、報道では現場では整備士が足りておらず、新しい設備を買う予算がなく古い装備で我慢しているという事情があると聞きます。
直近のニュースで大きいのは、防衛装備品としてF35A戦闘機を100機1兆円規模で輸入するということです。(2018年)
貿易赤字を減らしたいトランプ大統領の意向を受けてというところでしょう。
文教科学
文教科学費は、小・中の義務教育と、国立大学の費用負担が半分を占めています。
その他で大きい「科学技術予算」は、科学研究費助成事業や宇宙関連事業です。
(参考)財務省「平成30年度文教・科学技術予算のポイント」
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/11.pdf
こちらもコストカットで基礎研究には予算が非常につきづらく、若手研究者はとにかくポストが少ないです。
じっくり研究するためには大学へ資金の投入が必要で研究者が自由に研究できる環境が必要ですが、予算の大元の文部科学省も削られているのだから仕方がないという事情があります。
多くの大学研究者は危機感を感じていて、知り合いには「ノーベル賞は過去の遺産を食いつぶしている状態で、10年20年後の事態が危ぶまれている」なんていう教授もいます。
夏・秋頃に、「○○省、新規事業へ補助計画」なんて記事を見かけたら、補正予算か、来年度予算対策の可能性が高いです。
官公庁関連の記事はこのような面白さがあります。
補正予算
補正予算とは、当初予算とは別に、経済情勢や突発的な事態を見ながら、臨時的に出されるものです。
毎年、秋・冬に数千億円〜数兆円規模が組まれます。
2018年度は、10月に北海道胆振東部自信があり9,356億円。
そして12月、防災・減災、国⼟強靱化やTPP関連、自衛隊予算やスパコン費用などに3兆円が支出されました。
国家予算は、一般会計が基本ですが、毎年のように意外と大きな額を「補正予算」という枠で支出しているので秋の臨時国会が見逃せません。
社会保障
政府予算100兆円のうち、最も多くの32.7兆円を占めるのが「社会保障費」です。
日本最大の企業、トヨタ自動車の売上が29兆円ほどなので、いかに大きいかがわかると思います。
(引用)財務省「社会保障について 平成30年4月11日」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia300411/01.pdf
- 医療費…11.8兆円
- 年金…11.8兆円
- 介護…3.1兆円
- 福祉…6.2兆円
これを見て、「あれ、医療費とか年金、介護って、国民が払った保険料が財源になっているのでは?」と思った方はそうとう鋭いです。
確かに医療費は、「国民健康保険」「組合管掌健康保険」とか、健康保険に加入している人が月々保険料を納めています。
年金も公的な「国民年金」「厚生年金」とか、私的な「確定拠出・確定給付年金」があります。
介護保険は40歳以上の健康保険の加入者から自動的に源泉徴収しています。
このように国民は保険料を納めていますが、高齢化や医療の高度化で財源が全然足りないため、国が保険料を補う形で税金から給付をしているわけです。
詳しくは次の項目「社会保障給付費」で解説します。
4つ目の「福祉」は「児童手当」や「障害福祉サービス」など、そもそも保険料という形で徴収していないものなので、これは国や地方自治体、事業者だけで負担をしています。
社会保障給付費
社会保障費を見て、疑問に思った方もいるかもしれません。
「上の医療費や年金はあくまでも政府が支出した額だけど、実際に年間かかっている金額はどれくらいなのか?」
と。
これはとても真っ当な疑問で、むしろ給付の総額が大切です。
そもそも国民が必要としている医療費や年金などの総額コストがあり、通常は国民の保険料があてられています。
しかし、それでは財源として足りないため政府予算や国債が増えていくわけですね。
そこで、実際に支払われている総額を「社会保障給付費」と言い、そこで政府が補っている分が、上の「社会保障費」です。
では「社会保障給付費」は、どれくらいかと言うと、120兆円。(2017年度)
(引用)「社会保障について」(2018.4.11)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia300411/01.pdf
- 医療…38.9兆円
- 年金…56.7兆円
- 介護…10.6兆円
- 福祉…14.2兆円
では、この医療福祉サービスを維持するために必要な保険料収入はどのくらいか?
たとえ社会保障給付費が巨額でも、国民が納める保険料で賄えているなら、問題はありませんが…
実は、必要な120兆円のうち、保険料収入は68.6兆円しかありません。
先ほどの図で示されている右側ピンク色の「保険料」の項目です。
足りない50兆円ほどは、国の税金や、地方税、そして国債の発行(国の借金)で補われています。
国が税金から負担している「社会保障費」は上でも紹介した通り32.7兆円です。
さらに、財源は税金だけでなく国債(国の借金)にも頼っているので、なかなか厳しい状況と言えます。
政府が必死で消費税を上げようとしている背景には、このような現実があります。
- 医療・年金・介護・福祉など、社会保障に必要な総額「社会保障給付費」は巨額の120兆円。
- 本来当てるはずの保険料は68.6兆円と圧倒的に足りない。
- そこで国は「社会保障費」32.7兆円を負担し、地方も13.6兆円を負担している。
- しかしそれでも足りないため歳出カットや、新規国債発行や増税でバランスを整えようとしている。
- 国家予算は約100兆円で、75兆円程度が財政支出、残りは国債の返済・利払い。
- 予算には当初に決まる「一般会計」と臨時的に決まる「補正予算」がある。
- 最大の支出は「社会保障費」で32.7兆円。
- 「社会保障費」の内訳は、医療(11兆)・年金(11兆)・介護(3兆)・福祉(6兆)
税金
国の税収は60兆円程度です。
国債費を除く国の予算は75兆円程度のため、15兆円ほど赤字の状態です。
(引用)財務省「平成30年度一般会計歳出・歳入の構成」
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/seifuan30/01.pdf
この国債費を除く歳入と歳出のバランスと、プライマリーバランス(PB)といって、よく使われるので覚えて損はないと思います。
日本政府は財政の不足分を国債発行で賄っており、国債発行額は累計で1,000兆円を超えていますが、40%を政府の銀行である日本銀行が引き受けています。
国の税金の内訳
税金の内訳は、こうなっています。
一番上の「国税」に注目です。
(引用)総務省「国税・地方税の税収内訳(平成30年度予算・地方財政計画額)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000537947.pdf
- 所得税…19.0兆円
- 法人税…12.1兆円
- 消費税…17.5兆円
- その他…14.0兆円
上のグラフとは作成された時期や担当省が違うため、数字が微妙に異なる点は注意ですが、大まかに掴む分には問題ありません。
税金は2014年の消費増税やアベノミクスによる企業業績の好調よって積み上がり、過去最高を更新しています。
所得・法人・消費の税収三本柱は比較的バランスが取れているようですが、
それでも法人税の少なさ、所得税の多さが見て取れます。
法人税率はなぜ増やせない?
アベノミクスや世界景気の好調で、大手グローバル企業を中心に企業業績は絶好調です。
法人税負担を増やす余地はあるはずですが、経団連などロビー団体は法人税負担を抑える目的で消費増税を訴えています。
また経済界に近い安倍政権もそのような意向を受け入れているように見えます。
それに加え、実はもっと切実な事情があり……
世界では大企業や投資家による投資を誘致するための競争が繰り広げられています。
世界の4大国際金融センター、ニューヨーク、ロンドン、東京、シンガポールなど有力都市どうしの争いに加え、フランクフルトや香港、上海、深圳なども存在感があります。
小池東京都知事も、「金融ビッグバン構想」なんて言っていました。
そこで政府が法人税率を上げてしまうと、「有力企業が法人税の安い外国に拠点を移してしまうのではないか」「企業業績を圧迫して活力を削いでしまうのでは」「優秀な人材が日本に集まらないのでは」という心配があるわけです。
「賃上げ減税」など法人税は減税の動きになっています。
では所得税率は増やせないのか?
企業業績は好調ですが、企業は内部留保を貯め込み、労働者への分配は増えていません。
現状ただでさえ勤め人が税負担をしているのに、これ以上所得税を上げてしまうと家計を圧迫しかねません。
では「残るは消費税しかない」と言うのが財務省、そして政府の立場です。
消費増税でどれくらい歳入が増えるのか?
日本のGDP531兆円のうち、316兆円が個人消費です。
仮に1%消費税を上げても、単純計算で3兆円が歳入増になります。
もちろん、消費税が増えることで消費が控えられることは予想されますが。(これを「価格の弾力性」と言います)
それを考慮に入れても、2019年10月の8%→10%への増税では5.6兆円が増額分として見込まれています。
諸外国での消費税率は20%超えもザラ
ヨーロッパでは消費税率が20%を超える国もザラです。
呼び名は「付加価値税」と言われることもあります。
(引用)財務省「付加価値税率(標準税率及び食料品に対する適用税率)の国際比較」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j04.htm
- ハンガリー…27%
- デンマーク…25%
- フィンランド…24%
ただしこの三ヶ国の例は全てEU加盟国です。
人とモノの流れが自由なEU圏内では移動が自由なため、企業は法人税が安い国に流れ、労働者は所得税が低い国に流れやすいです。
国内での消費活動に対して、税当局が確実に税金を取りこぼさないためには、消費税がベストなので消費税率が高いという事情があります。
日本では、所得税と消費税が取りこぼさない税収で、うち所得税負担はすでに大きいので消費税頼みだと言う現実がわかると思います。
- 国の税収は2014年消費増税や企業業績の好調で62兆円と最高水準
- 税収三本柱は所得税19兆、法人税12兆、消費税17兆
- 予算75兆円規模に対して税収が不足しており政府・財務省は消費増税に注力
まとめ
中村教授
かなり要点を絞りましたが、国家予算の現状がわかっていただけたのではないかと思います。
その上で、「財政が厳しいので増税して将来不安に備えるべきだ」とか、
「まずは景気を優先して税負担を減らし、経済が活発になり自然に税収が増えるよう期待すべきだ」という声に分かれています。
基本的に日経新聞は前者の立場が強いように思いますが、もちろん全てがそうではありません。
人によって意見が違って面白いので、ぜひ多くの意見に触れてみてください。
国の財政の話をするときに、この記事の数字が頭に入っているだけでも違うと思います。
ぜひ読み返して、役立ててもらえれば幸いです。
アキ
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