登場する重要な用語は、この通り!
アキ
- 貿易
- 国際収支
- 経常収支
- 国際収支統計
- 第一次所得収支
教授、よろしくお願いします!
アキ
中村教授
「貿易」はグローバル経済の中、日本と海外との経済の関係を表す非常に重要な指標です。
中村教授
中村教授
中村教授
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貿易
「貿易」とは、外国へ製品を輸出したり、外国から製品を輸入することを指します。
家電や食料品とか、形あるものだけではなく、ソフトウエアや知的財産、サービスなども含まれますが、これは「サービス収支」という名前で計算されています。
現状の日本は貿易黒字
(引用)財務省「平成29年分貿易統計(速報)の概要」
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2017.pdf
現状、どうなっているかと言うと、
2017年の貿易では、輸出額が78兆円、輸入額が75兆円で、3兆円の黒字になっています。
輸出先の一位が米国15兆円、二位が中国14兆円、そしてEUが8兆円です。
輸出の主力は半導体製造装置、自動車です。
高度経済成長期、成長の源は製造業の輸出でしたが、今は様子が変わっています。
80年代までは富士通、NEC、東芝など国内の半導体メーカーが強かったのが、今は台湾、中国、韓国が強くなっています。
なので今は半導体を輸出しているのではなく、半導体を作るための製造装置を、これらの国々に輸出しています。
- 輸出、輸入とも年間70兆円規模でほとんど収支ゼロ
- 主力産業は半導体製造、自動車
- 輸出先は米国、中国、EU圏
貿易赤字は悪か?
「貿易は黒字である方が善である」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
米国は人口が多くて雇用状況もよく、消費が絶好調です。
そこで米国内の企業だけでは生産をまかなえません。
日本、中国、ドイツなど優れた製品へのニーズがあるから輸入額が大きく、巨額の貿易赤字になっています。
これは景気が良いから赤字になるパターンで、良い貿易赤字です。
「外国から商品を仕入れなければ足りないほど国内の消費が強いことの何が問題か?」
これが多くの経済学者の見方ですが、トランプ大統領は外国排斥のためのわかりやすい材料として「貿易赤字」というキーワードを活用しています。
IT業界の覇権争いで中国を叩きたいという思惑もあるようです。
国際収支
「国際収支」とは、貿易やサービスや投資など、国際的な経済活動を総合的に表す指標です。
先ほどの貿易は一番メジャーな言葉ですが、実は国際収支の中の一つの要素でしかないため、貿易収支だけを見てもグローバルな経済活動がわかりません。
こちらのグラフを見てください。
(引用)財務省「我が国の経常収支の構造変化:「貿易立国」から「投資立国」へ」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201806/201806e.pdf
1981年から東日本大震災前の2010年まで、日本は巨額の貿易黒字だったことがわかります。
これは日本の製造業が世界を席巻していた時代です。
しかし震災をきっかけに原発停止、火力発電所への依存、海外からの原油輸入で貿易赤字に転落し、今は見る影もありません。
大手製造業が中国や東南アジア、米国などに製造拠点を移して現地生産していることも影響しています。
そして今一番大きな数字は、「第一次所得収支」です。
海外ではこれで稼いでいます。
これは後の項目で説明しましょう。
- 「国際収支」の中で最も重要なのが「経常収支」
- 2017年「経常収支」は22兆円もの黒字、貿易は3兆円の黒字。
- 今や日本は貿易大国で稼いでいるわけではない。
日本経済新聞の国際収支統計の内訳
日経新聞には毎月この「国際収支統計」が掲載されます。
これも見方を知っておくと面白いです。
日本経済新聞 2019.1.12
これは2018年11月の国際収支です。
大きな3つの要素に、
- ▽経常収支
- ▽資本移転等収支
- ▽金融収支
があり、そして統計で捕捉できない金額を調整するための「▽誤差脱漏」があります。
「▽経常収支」とは、いわゆる貿易や旅行関係の航空・運輸サービス、知的財産の使用料などがあります。
国際収支では実態の経済活動を表すもっともわかりやすい指標が「経常収支」です。
この中にモノの輸入・輸出などが含まれる重要なキーワードなので、次の項目で解説します。
「▽資本移転等収支」とは、貧しい外国政府への資金的な援助などです。
全体の中で金額は小さいので、あまり重要ではありません。
「▽金融収支」とは、海外への直接投資や証券投資、金融デリバティブ、外貨準備(外国の通貨・国債)などです。
金融収支がプラスだということは、海外資産を取得したということで、円が売られてドルが増えるなどの状況を指します。
ここは難しく考えないでください。
経常収支と金融収支は表と裏の関係にあります。
簡単な話で、日本から製品を輸出するときは米ドルや人民元で代金を受け取るため、金融収支が増加します。(円高要因)
逆に輸入するときは代金を米ドルなどで支払うため、金融収支は減ります。(円安要因)
つまり、経常収支がプラス(日本製品が海外で売れる貿易黒字)であれば、金融収支もプラスになります。
なので国際収支は、誤差がなければほとんど
経常収支=金融収支
という関係が成り立つことは頭の片隅に置いておいてください。
ただ、実際にはわずかながら「資本移転収支」もあるため、正しくは以下の式になます。
経常収支+資本移転等収支=金融収支
経常収支
国際収支の中で一番大切なのが、この「経常収支」です。
理由は、額が大きく、貿易、サービス、投資、融資などの実態の経済活動を表すからです。
もう一度、先ほどのグラフを見てみましょう。
今や、「貿易」ではなく、「第一次経常収支」で稼いでいる、と言いました。
日本経済新聞に掲載されている「▽経常収支」の内訳をみると……
日本経済新聞 2019.1.12
- 貿易・サービス収支
- 第一次所得収支
- 第二次所得収支
の三つがあります。
金額をみると、貿易・サービス収支は▲5470億円、第一次所得収支は14,388億円、第二次所得収支は▲1,346億円です。
いかがでしょう?
大抵は「貿易」というワードを頻繁に聞くはずですが、貿易は「▽経常収支」の「貿易・サービス」「第一次所得収支」「第二次所得収支」3つの要素のうちの一つでしかなく、やはり「第一次所得収支」が大きな額を占めているのが確認できます。
日本系グローバル企業は国内よりも中国・東南アジアでの生産を加速しており、実はかつてのような輸出大国ではありません。
そして原発が停止していることで国内エネルギーは火力発電、つまり原油の輸入に依存しています。
おまけに中東情勢の不安定で原油高のため貿易収支を圧迫しています。
そこで輸出減少、輸入増加という流れで貿易・サービス収支は赤字になっています。
なぜ日本企業は海外子会社へ投資・融資をするのか
しかし、その部分だけを見てもあまり意味はありません。
むしろその陰で日本のグローバル企業・メガバンクは海外子会社へ積極的に投資・融資をして、そのリターンとして巨額の配当・利息収入を得ているという現実があります。
「海外純資産」は300兆円を超えており、1991年から世界トップです。
これは良いのか、悪いのか。
日本は経済成長が伸び悩み、低金利で有望な資金の運用先がなく、海外経済に活路を求めるのはグローバル経済の中では当然の判断だと言えます。
その点では、日系グローバル企業やメガバンク、投資家は当然の判断をしています。
株主の大切なお金や数万人の従業員の生活を預かるわけですから。
ただ、これは裏を返せば日本国内に有望な投資先・融資先が少ないということも意味しています。
これを若いみなさんは、どう思いますでしょうか。
- 経常収支は、国際収支の中で最も注目すべき指標。
- 経常収支とは、貿易・サービス・知的財産権料・投資収入・利息収入など全体的な活動を表す。
- 経常収支統計によると、日本は貿易ではなく海外への投資・融資で稼いでいる。
まとめ
中村教授
中村教授
国際収支の仕組みを知っていれば、貿易赤字や黒字などのキーワードに振り回されることなく、ポイントがわかるようになります。
中村教授
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