「すべての経済はバブルに通じる」小幡績著の感想

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数年前、伯父と話した時のこと。

東京で働いていたのが、病気の治療のため札幌の病院に入院していたのを見舞いに行ったのが最初の対面だった。
私は日本の土地バブルが崩壊し始めた直後に生まれた。
それもあって、当時の話になった。

私はもちろん記憶はない。
叔父はとても楽しそうに当時のエピソードを聞かせてくれた。

  • 毎日のように高い店で贅をつくした食事をして酒を飲んだこと
  • 給料が急激に上がって欲しいものは不自由なく手に入ったこと
  • 誰もが羽振りが良くて遊びつくしたこと

「あれほど楽しかった時代はなかった。叶うならもう一度あの時代に戻りたい」

私はバブル崩壊した後の失われた20年しか知らない。
気になって聞いてみた。

「たとえいつか崩壊すると分かっていても、戻りたいですか?」
「戻りたいねえ」

伯父の屈託のない笑顔を見ながら、「そのようなものか」と、妙に納得したことを憶えている。

なぜバブルは起こって、そして必ずはじけるのか?

よく聞く説明は、

「モノの価値は、実態(ファンダメンタルズ)に基づいて決まる。
ただ日々の取引の中で、経済の先行きの見通しや大きな構造の変化で注目されるモノがある。

それは期待によって値上がりし、その値上がりを見てほかの投資家も参入し、あとはねずみ講のように、実態からかけ離れて価格が高騰していく。
実態から大きく乖離すると、誰もがその値上がりに懐疑的になり、丁度いいところで売ろうと待ち構えている。
すると少しの懸念がきっかけでみんなが一斉に売りはじめ、崩壊が起こる。」

というもので、つまりは自然発生的だということだ。

バブルにはネガティブなイメージがある。

バブルに投資すると、リターンを期待できるかもしれないが、リスクも非常に大きい。
崩壊のあとは経済が傷を負い、回復するまで時間もかかる。

しかし、もしバブルの中、高値で商品を売り抜けることができ、価格がたとえ暴落しても全くリスクを負わないのなら、どうだろうか?

そんな魔法のような金融商品が、実は存在する。
それを売って儲けるために、意図的にバブルを起こそうとする人も当然いる。
(儲けるために何とかそのようなテクニックを思いついた、とも言えるかもしれないが)

本書はそのようなバブルの流れを明らかにするものだ。
バブルは、自然発生的なものではなく、構造的に起こるものなのだ。

そしてその構造は、バブルを焚き付けた人がノーリスクで最も儲け、無知な顧客の屍の上に立って、悠遊としている、というものだ。

それを聞いて、今は亡きかの伯父はなんと言うだろうか。

「まあいいけどね、それでもさ。もういちど楽しみたいよ。」

バブルは、わかってはいても魅力的なのだ。

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