株式投資で大損しない情報収集のコツを解説します。
経済学「逆選択」と「モラルハザード」の用語をヒントにしますが、投資でもビジネスでもリスクと対処法がわかれば、ミスを大きく減らすことができます。
株投資家が大損する「逆選択」
逆選択とは、「貸し手が優良な借り手だけと取引しようと、返済のリスクが高い借り手を避けようとする結果、本来望んでいない高リスクの借り手ばかりが取引に応じることになってしまう」という皮肉な現象です。
- あまりにも高い配当率
- 上場後数年なのに自社株買い、高配当
- 顧客に対して現金即入金・今入会なら高い還元のお得なキャンペーンをしている
投資家への高い還元をうたっている企業は、そうでもしなければ株主を維持できないのか、あるいはよほど儲かっていて内部留保に使い道がないから思い切って還元しているのかのどちらかです。
エムスリー(医療系ポータルサイト運営)は、上場以来、おおよそ配当利回り3%という高水準です。
これは株主を引き留めるというより、本当に儲かっているのです。
ROEも継続的に20~40%です。
大きな設備投資を必要としないため、キャッシュが余るのでしょう。
これは良い企業です。
一方、倒産間近まで配当を続けていた企業もありました。
本来業績が危ういなら真っ先に事業を立て直すために現金を使うべきなのですが、儲かっていると見せかけたかったのでしょう。
事業が危ういことを正直に公表したうえで、株主には我慢してもらって配当せず、再建にお金をつぎ込めば再建する可能性があったのに、これは重大な背任です。
このような企業は、2つの逆選択をはらんでいます。
1 投資家にとっての逆選択
それは儲かっている企業で、儲かっているなら高還元なはずだ。
高還元の企業に投資しよう」
というロジックで失敗を避けようとしたところ、かえって「高還元」という言葉の罠にはまって求めているのと逆の企業を選択したことです。
2 企業にとっての逆選択
株主に高い還元をすれば、株主は長期にわたって保有してくれるはずだ。
だから株主還元を強固にしよう」
というロジックで高配当を実施したところ、長期にわたってファンのような株主が増えてくれるかと言えば全く逆です。
むしろ「高還元」のみに釣られて投資した株主ばかりで、企業に対してのロイヤリティはありません。
業績が傾いたり、還元が少しでも鈍れば去っていくでしょう。
これは企業にとって望ましくない逆の選択です。
付け加えれば、最後の顧客獲得のための「高いポイント」「返品可能」「大幅割引」「3回まで無料」などのキャンペーンは、安さや大きなサービスばかりを目当てにしている人である可能性が高いので、企業として望ましいことではありません。
このようなプロモーション戦略をとっている企業は、注意した方が良いでしょう。
アップルがiPhoneを値引きする必要があるでしょうか?
株投資家が注意すべき「モラルハザード」
モラルハザードは、「資金を手に入れたあと、返済の努力を怠ること」です。
たとえば企業が上場する時は、自社の業績や、事業の将来性やコーポレートガバナンスについてなるべく情報をオープンにします。
これは情報の非対称性を防いでいるのです。
しかしこれは、情報の非対称性のうち、現時点での情報にすぎません。
株主からしてみれば短期で売り抜ける人もいれば、長期にわたって保有する人もいます。
長期保有を考えている株主は、「上場時だけでなくその後も継続してその企業が当初自分が思った通りの魅力的な企業なのか?」と確認しつづけたいと考えます。
一方、企業からすれば、初めの上場で資金調達ができたわけですから、当初の目的は達成したわけです。
そのあと増資や融資を受ける計画がなければ、株主本位になるモチベーションは、上場前に比べて薄れます。
これは、株を買う時だけではわかりません。
投資家は定期的に「今でも十分投資に値する企業なのか」を点検する必要があります。
株投資で大損しない役立つリスク・流動性の考え方
この将来の不確実性の考えも、投資やビジネスで非常に役立ちます。
このページでは、リスクや流動性の選好度合が人によって異なるので、金融取引が行われづらいと解説してきました。
投資家のあなたは、選考度合のマッチングというより、そもそものリスクや流動性について、どう対処すべきがを考えるのが良いでしょう。
株式などの投資でリスクという時、2つの意味を考えます。
1 信用リスク
これは一般的な用語で、いわゆる単純な貸し倒れリスク(信用リスク)です。
「借り手がしっかりお金を返してくれるか」
「投資した会社の業績が悪化して潰れて、出資金が回収できなくならないか」
いざ投資をする際、企業のことをよく調べていてその時点では「問題なし」と思えて、実際に正しいとしても、あとで事情が変わるかもしれません。
経営者がモラルハザードで努力を怠ったわけではなくても、競争環境が変わって優良企業が一転、負債を抱え込んでしまうことも往々にしてあります。
特定の企業にだけ集中的に投資していれば、その企業が失敗したとき、その損失はもろに食らってしまいます。
2 株価のボラティリティ
経済学や投資の世界では、しばしば「リスク」は変動率(ボラティリティ)を指します。
日用品や食品などの比較的業績が安定している企業の株価はそれほど動きませんから、リスクが低い。
ということです。
当然ながら、投資家にはボラティリティが低い方が、安心できるので望ましいという方もいます。
これらの、個別銘柄の「信用リスク」や「ボラティリティ」に対処する方法は以下の通りです。
- 1 常に企業の新しい財務諸表や、業界事情を可能な限りウォッチして不確実性に先回りする。
- 2 個別銘柄にはあまり注目せず、数10銘柄で分散投資をする。
主にファンダメンタルを重視している投資家なら、企業の公式情報や財務諸表はもちろん、新聞や政府発表の統計などを駆使して、その企業と競争環境に問題が表れていないか、その兆候がないかをチェックするのは常識です。
ただこれは労力がかかります。
一方で分散投資であれば、そのような個別の銘柄の動きにあまり左右されず安定的に収益を得ることができます。
数は必要ですが、30銘柄くらいを組み込んだところから、ボラティリティもかなり下がります。
30を超えれば東芝のように株価が半分以下になってしまっても、ほとんど影響を受けません。
東京証券取引所には「上場投資信託」という商品があり、通常の株と同様に簡単に売買できます。
それを買えば、非常に低いリスクで投資することができます。
投資家が大損しないための流動性
流動性とは、「手持ちの株や不動産などの財がどれだけ現金化しやすいか」です。
たとえば株は常に市場で取引されていますから比較的現金化しやすく流動性が高いです。
不動産はそれほど頻繁に売買されるわけではありませんから、流動性が低いです。
株の中でも、取引の多い流動性が高い銘柄と、年に数回しかも取引されないような流動性の低い銘柄があります。
流動性が低いと、参加者が少ないので価格が乱高下するボラティリティのリスクがあります。
また、最悪の場合あなたが売りたいと思っても買い手が現れず現金化できないかもしれません。
いくら「割安だ」と思って買っても、売りたいときに売れないのでは意味がありません。
これは最悪です。
一方、流動性が高い銘柄はボラティリティが低い傾向にあります。
常に売り手も買い手もいるので、売りたいときに確実に売れるという利点もあります。
このように、流動性という点で投資先を選ぶことはいざという時守ってくれます。
- 投資は情報の非対称性と不確実性に対処すれば失敗を減らせる
- 情報の非対称性は、企業への継続的なチェック
- 不確実性は、チェックと分散投資が有効
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