銀行の実務を解説 | SMBCの証券化の事例

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このページでは、銀行などの業界に興味がある方向けに、金融の実務をやさしく解説します。

SMBC(三井住友銀行)のケースを参考に、金融のポイントを見ていきます。
銀行の役割と面白さがわかります。

銀行の仕事

流動性は、銀行が将来の不確実性に対処するための重要な方法です。

つまり、融資をしていざ焦げ付きそうになったり、急に銀行が手元に現金が必要になった時に、すぐに手元にある資産を売って現金化できるようにすれば、ある程度のリスクは減らすことができます。

一方、日本銀行のように、大量に国債を保有していて、それを一気に売ると国内外の金利市場に大きな影響を与えてしまうようなプレイヤーだと、迂闊に売ることができず、保有資産の値下がりリスクが付きまとうことになります。

三井住友銀行の事例

この流動性ということは特に投資ファンドや証券会社も扱いに長けているのですが、三井住友銀行が取り組んでいる、面白いスキームの記事を読みました。


(写真) 日本経済新聞 朝刊 2017.10.02 「三井住友銀と政投銀、米国で中堅買収向けファンド

かいつまんで言うと、こういうことです。

  • 1 米国の投資ファンドが企業を買収したい時に資金が足りないことがあるので、三井住友銀行が投資ファンドに融資をします。
  • 2 三井住友銀行は融資をすることで利息収入が得られますが、将来買収がご破算になるかもしれないし、事業環境の急な変化で企業業績が不安定になるかもしれません。
  • 3 そのような信用悪化のリスクを避けるため、三井住友銀は融資した債権を、手元にとっておかずに第二のファンドに売却してしまいます。
  • 4 その第二のファンドとは、実は三井住友銀行と日本政策投資銀行が共同で立ち上げるファンドです。

ここまでが主に記事の内容です。金融取引のリスクという点から解説します。

銀行業務の解説

銀行は、利息収入のために貸出は増やしたいが、貸し過ぎると貸し倒れリスク(信用リスク)が増えて財務指標が悪化してまうというジレンマがあります。
このスキームの利点は三井住友銀は実質的に貸出を増やしながらも、名目上は子会社のファンドに債権が移転しているため、「信用リスクがない」ように見えるということです。
また、債権を子会社ファンドが管理すれば、分業によって焦げ付きリスクの管理や資金管理が効率的にできます。

しかし話はここで終わりません。
これだとまだ最終的なリスクは子会社ファンドの親である三井住友銀行傘下に残ってしまいます。
実はこの子会社ファンド、買い取った政権を国内の地方銀行や生命保険会社など機関投資家に転売することも検討しているそうです。

仮に転売すると、三井住友銀行からも日本政策投資銀行からも、もちろんその子会社ファンドから完全に債権が手を離れたことになり、リスクから解放されることになります。

リスクの管理の方法
しかし、魔法の杖はありません。世の中のリスクの総量は減りません。
リスクは誰かが必ず負担するのです。問題は自分がどれだけ負担するかです。そのカギが流動性です。
この場合、最終的な売却先である地銀など機関投資家がリスクを握ることになります。

まとめると、このスキームによって三井住友銀行は二重のリスク管理の方法を編み出したわけです。

銀行自身の貸し出しを子会社ファンドに委託して監視機能を高め、

  • 情報の非対称性を埋める
  • ファンドが債権を証券化して(売買できるようにすること)
  • 流動性を確保し、他の機関投資家に転売し将来の不確実性に対処する

金融の世界では、様々なリスクがありますが、それらは必ず情報の非対称性や将来の不完全性のどちらかに集約されます。
企画のアイデアも、「リスクをどのような形で埋めるのか?」 がポイントです。

これは三井住友銀行が利益の種を確保しつつ、うまく対処している好例でしょう。

銀行とリーマンショック

このスキームはリーマンショックにも悪用された
一つだけ付け加えておくと、このように「銀行や住宅融資会社がお金を貸して、その貸出債権はすぐに誰かに転売してしまう」という構図はリーマンショック前サブプライム危機を引き起こしました。

もっとも、今回の三井住友銀行のスキームがそのようなことを招く、などと言いたいわけではありません。
このようなスキームは世界の金融業界でごく日常的に行われているものです。

最終的な買い手の機関投資家は、証券を買う前にしっかり元がどのような買収案件だったのかを確認して情報の非対称性を埋めればよいわけですから、その当たり前のことさえ怠らなければ問題ありません。

サブプライム危機の時は、融資会社がサブプライム(プライムではなく低所得)層に節操なく住宅ローン融資をしてそれを証券化しました。
それだけだと誰も買わないので、優良層へのローンの証券とごちゃ混ぜにして、100人とか1000人に貸している債権を束にして売りました。「30人がサブ、70人がプライムの束債権」「優良、普通、サブが1:1:1の束債権」というように。

こうして、債権の組み合わせよって無限の複合証券が出来上がったわけです。

そのリスクは証券を作った人、一番最初に融資をした住宅融資会社や銀行はよく理解していますから、自分の手元に残さず、ほとんど右から左に流すように投資家や投資銀行などに売りさばきました。

投資家たちは複合証券のリスクなどよく調べないで情報の非対称性を埋めないまま、ただ高利回りといううたい文句に釣られて多くが買い漁りました。
「皆がやっているのだから大丈夫だろう」という集団心理もあったことでしょう。

その複合証券のうち、高利回りで高リスクのものを巨大に背負っていたのがリーマン・ブラザーズで、その後は皆さんの知る通りです。

この当時の問題は証券を売る側が、焦げ付きリスクの高い人間にかなり思い切って融資をし、そのゴミのような債権のリスクをうまくおめかしして複合証券化、リーマンのような投資家たちも情報の非対称性を埋めようとしないまま買いまくった、ということにありました。

問題はモラルもあるでしょうが、情報の非対称性を解消できなかったことが大きいです。

転売される機関投資家は、必ず証券の元をたどって、一番最初の根っこまで確認することがリスクを減らしてくれます。

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