不確実性「市場の失敗」は信用リスクと流動性低下リスク | ビジネスに役立つ経済学

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このページではビジネス・投資に役立つ経済用語の不確実性について解説します。

経営でも投資でも将来のことは完全にはわかりません。

そのため、取引は慎重にならざるを得ません。

しかし、「将来の不確実性が何か」をしっかり理解できれば、未来への対処ができます。

不確実性とは

不確実性とは、「将来何が起こるかわからない」ことです。

火事、台風、地震、交通事故、取引先の倒産、恐慌など、可能性としては何でもあり得ます。

このような不慮の出来事によって借り手が将来返済できなくなる、貸し手が急にお金が必要になる、などのリスクがあります。

このように、不確実性が「市場の失敗」を起こします。

市場の失敗は、売り手と買い手のマッチングが問題で、取引が正常に行われなくなることです。

そして、不確実性が起こす市場の失敗には、「信用リスク」(貸倒リスク)と「流動性低下」があります。

情報の不完全性4つ

不確実性と「情報の非対称性」

仮に、「情報の非対称性」が解決して、貸し手が借り手について十分な情報を得ることができたとしましょう。

今のところ、所得はしっかりあり、これからも会社勤めが順調にいけば給与は十分上がっていって、浪費癖も無く健康状態も良いらしい。

「これならお金を貸しても大丈夫そうだ。」

しかし、それはあくまでも今のところの話で、将来に何が起こるかはわかりません。
事故や事件に巻き込まれたり、急に体調を崩すかもしれません。
今の情報の問題が解決しても、将来のことはわからない。

将来の不確実性が、問題なのです。

不確実性と信用リスク

信用リスクとは、「貸した相手が将来返済できなくなって、貸し倒れてしまう」リスクです。

  • 友人どうしのお金の貸し借り
  • 銀行が企業へ融資する
  • 株式投資で企業が投資家還元できないほど業績が悪化した

このように信用リスクはごく身近なものとして存在します。

これが「市場の失敗」になってしまうの原因は、買い手や売り手のリスク選好度合の不一致があります。

リスク選好の不一致

リスク選好の不一致とは、「貸し手と借り手で、リスク許容度(リスクの好みの度合)に差があり、同じ条件の相手と巡り合うことが難しい」という市場の失敗です。

「借り手の将来の返済能力の不確実性」が原因です。

貸し手のリスク許容度
貸し手は、普通は信用リスクを避けようとするでしょう。
なるべく収入も安定していて将来も安泰な人にお金を貸したいと考えるはずです。

 

やむを得ずリスクの高い相手に貸す場合は、条件を厳しくするでしょう。
たとえば金利を通常よりも高く設定し、返済期日も比較的早くするなど。

 

このように、貸し手がリスクに見合っただけの対価を得ようとすること、これをリスク回避的であると言います。
(単に「リスクを避けようとする」という意味ではありません。
「リスクに応じたプレミアムを要求する」ということです。)

借り手のリスク許容度
借り手は、もちろん自分のリスクについて、ある程度はわかっているはずです。

住宅ローンや車のローンを組むとき、健康問題や事故、災害について考えれば、将来の収入の保証がどこにもないということは、だれよりも自分が理解しています。

 

もし事業者なら、「今どうしても苦しくお金が欲しいが、ここを乗り切れば何とかなるはずだ」という、希望的観測を持ちながらも、事業が本当に上手くいくかどうかは内心わかりません。

 

ですが、借り手は融資がどうしても必要ですから、信用リスクを理解した上で、許容してくれる人を探します。
つまり、「リスクがあるのはわかるけどそれに応じた条件でお金を貸してくれる人」を探します。

不確実性とリスクのマッチング

貸し手も借り手も、条件に合致する相手が見つからなければ取引は生まれません。

貸し手は利息収入を得る機会を逃し、借り手は今必要なお金を得られず、それで買えたはずのものや継続できたかもしれない事業収入が途絶えてしまいます。

つまり、誰も得をしないままに終わってしまいます。

信用リスクは分かった上で、リスク許容度の違いが「市場の失敗」を招きます。
これを埋めるのが取引所、証券会社や銀行などのマッチングシステムです。

不確実性と流動性

流動性とは、「資産交換の容易さ」のことです。
端的に言うと、「現金化のしやすさ」です。

株や債券は証券会社を通してすぐに売ることができるので、現金化しやすく流動性が高いです。(買う場合も同様)
不動産や正社員の労働市場などは、株などと比べて比較的取引数が少なく現金化しづらいため流動性が低いです。

これが「市場の失敗」になってしまう原因には、買い手や売り手の流動性選好度合の不一致があります。

流動性選好の不一致

流動性選好の不一致とは、「貸し手と借り手で金融取引の期間に対する選好度に差があり、同じ条件を持つ相手と巡り合うことが難しい」ということです。

具体的には、貸し手の将来支出の不確実性が原因でこれが起こります。

情報の不完全性4つ
貸し手の流動性選好
貸し手は、普通貸したお金がすぐに返ってくる方が安心できます。
あまり長期間になると、確かに利息は多く払われますが、その間に何があるかわからずリスクが高くなるからです。

今までは借り手の返済能力ばかりについて話してきましたが、貸し手も「いつ」「いくら」お金が必要になるかわかりません。
その時のために手元になるべく多くの現金を確保しようとし、もしくは非常時にはすぐに現金を調達できるようにしたいと考えるのは当然です。

ただ現金が余っているならそれを手元に置いているだけでは現金は増えませんから、どこかに貸して利息収入を得たいという、相反する気持ちがあるのも真実です。

結果、貸し手はお金は貸して金利収入は得たいが、不測の事態に備えて自分の購買力も確保したいと考えます。
ふつうは貸し手は短期間の金融取引を好みます。

10年物国債や20年物国債など、長期の債権は人気ですが、そもそもそれは転売することができます。
住宅ローンなど30年間にもわたる貸出は、資金量が多いからできることです。
また、いざ銀行にお金が必要になれば、銀行間でお金を貸し借りできます。
つまり、これらの取引ができる背景には手元資金の心配がないのです。

借り手の流動性選好
借り手は資金を長期間確保したがります。

そもそもお金が不足しているからお金を借りたいわけで、金利を払ってでもなるべく返済期日を後ろに設定して手元資金を確保したいでしょう。
また、短期間でビジネスを繰り返すよりも、長期的な視野に立って一つのビジネスを腰を据えてやった方が、はるかに効率がよく生産性も上がります。

このように、借り手は頻繁に借り換えを繰り返したり資金の引き上げをされるよりも、長期間の方が有利に働きます。
ふつうは借り手は長期間の取引を好みます。

 

補足
迂回生産の利益
同じことを長くやった方が収益率が高い。
借り手は長期の資金を好むということを示すものに、迂回生産の利益という言葉があります。
それは、同じ事業をするとしても、短期間よりも長期間した方が、利益率が大きくなりやすいということです。
ですの借り手は長期の借り入れを好む傾向にあります。

短期の場合
あるビジネスがあり、100万円つぎ込んで1年間を通してやり、1年後は終了します。その利益が5万円だとします。
これを3年間、3度にわたって繰り返せば利益は15万円です。
投資額は1年間で100万円なので、1年あたりの利益率は5%です。

長期の場合
同じビジネスを、3年間、途切れさせることなくやるとします。
つまり最初に100万円をつぎ込み、ビジネスを終了するのは3年後だけです。
すると、利益は合計20万円になり、1年あたりの利益率は6.7%になります。
数字は仮ですが、要するに、短期よりも長期の方がビジネスとしては収益性が高いということです。

金融取引とサーチコスト

以上みてきたように、不確実性があることで貸し手と借り手で将来に対するリスクの考え方に差が生まれます。
すると双方の条件が合うようなマッチングが難しくなります。

結婚もそうですが、双方にとって望む条件があって、それに合う相手を探すというのは難しいものです。

探す時の金銭的、時間的、労力的なコストをサーチコストと言います。
もしせっかく探して幸せになったとしても、その幸福度に対してサーチコストが大きすぎれば、意味がありません。
初めから探さないでしょう。

銀行も、運転資金に困った会社の社長も、取引相手を探すサーチコストがあまりにも大きければ、取引相手を探すことを諦め、仕方なく損をすることを受け入れます。

このように、不確実性は、将来に対する不安を生みます。

貸し手と借り手で不安に対する考え方が違うため、リスク選好の不一致や流動性選好の不一致を引き起こします。
それが原因で条件の合う相手を見つけることが難しくなり、金融取引を阻害します。

不確実性と投資家

信用リスクと流動性、そして参加者の許容度の違いが「市場の失敗」を招くということを解説してきました。

これを聞くと、「金融取引はリスクだらけで遠慮したい」と感じるのではないでしょうか。
実際、貸し手も、借り手も、過度に将来のことを心配ばかりしては金融取引は全く成立しません。

ですが、現実に金融取引は成立していますし、

ビジネス・投資としてのポイントは、

  • 「投資のリスクが何か」
  • 「対処できることとできないことは何か」
  • 「できることは、どうすれば対処できるのか」これを知ることです。
あなたもする時は、4つのリスクを考えてみてください。

不確実性のまとめ
  • 不確実性とは、「将来何が起こるかわからない」こと。
  • 不確実性が原因で起こる「市場の失敗」には、信用リスクと流動性がある。
  • 信用リスクと流動性は同じ選好度の相手とマッチングすれば市場の失敗を防げる

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