為替介入の仕組と為替レートへの影響 | 中央銀行のバランスシート図解で経済がわかる

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このページでは、「中央銀行による為替介入が、どのように為替レートに影響を与えるのか?」
について解説します。

為替介入とは中央銀行が直接的に自国の通貨を売ったり買ったりすることで為替レートを短期的に調整することです。

「中銀が自国通貨を売ったり買ったりなどの介入をすれば直接的に為替レートが動くので解説など要らないのでは?」

と思うかもしれませんが、実は通貨の売買だけではまだ不十分です。

むしろ「オペレーションをした後どうするか」も同じくらい重要です。

為替介入と変動相場制

いうまでもなく、日本は変動相場制です。
戦後から続いていた固定相場制は1971年にブレトンウッズ体制が崩れたことによって崩壊しました。

(写真)麻生太郎財務大臣 中央銀行の最終的な責任は上部組織である財務省のトップが負う

固定相場制とは、為替レートが変わらないように中央銀行が外貨と自国通貨を売買する制度です。
それがなくなり、今は市場の動きに任せています。

日本は円安が好ましい構造
しかしそうであっても、日本はグローバル大企業を中心に輸出で外貨を稼ぐ国です。
そのような企業が輸出競争力を高めるには円安の方が好ましいです。

日本は長年のデフレと低金利で、他国に比べて円高になりやすい構造にあります。
当然のことながら、これは都合が悪いことです。

そこで、為替相場が円高方向に大きく振れる時には、円安ドル高を目的に円売りドル買いの介入を行うことがあります。
介入それ自体は直接的に為替を操作する効果があります。

それに加えて、実は事後的な効果もあります。
むしろ為替介入そのものよりも、その事後的な一連の処理をするかしないかが為替レートに影響を与えます。

日銀の為替介入とは

まず為替介入とは、外貨や自国通貨を売買することで直接的に為替レートを操作することです。
これは単純な話なので理解しやすいと思います。

日本銀行が円を売ってドルを買えば円安ドル高になりますし、円を買ってドルを売れば円高ドル安になります。

この外貨や自国通貨とは具体的に何を指すかと言えば、それは現金ではなく、主に有価証券です。

たとえば米国ならば米国債、日本ならば日本国債です。
日銀が円安ドル高を目的に円売りドル買いをしたいなら、日銀が手持ちの現金(日本円)を支払い、日本の民間銀行が保有する米国債を買い上げます。

日銀は手元の現金円が米国債になり、民間銀行は手元現金が増えます。
現金は日銀当座預金に預けます。

これによって市中の現金が増えるということです。
日銀売り介入

為替介入と貨幣供給量

こうして為替介入を日銀のバランス・シートの中身まで踏み込んで考えてみると、実はここに、事後的な効果のポイントがあることに気が付きます。

為替介入と為替レート

日銀は介入によって価格操作しているのに加え、その結果として貨幣供給量まで変化させているということです。

マネタリーアプローチによると、貨幣供給量(マネーサプライ)の増加は物価を押し上げ、自国通貨の減価(つまり円安)効果があります。

つまり日銀の為替介入は、直接的な為替操作と、貨幣供給量の操作によって、二重の作用を果たしているわけです。

為替介入を図解

図を使いながら見てみましょう。
日銀売り介入
(再掲)

1 直接的な売買による為替影響
円安誘導の場合、日銀は直接的に円を売り、ドルを買います。
これが為替介入作用の1つ目です。

2 マネタリーアプローチ的な為替影響
同時に、日銀バランスシートの資産欄で「米国債」が10兆円増え、同時に負債欄で「民間銀行当座預金」も10兆円増えています。
貨幣数量説によると、マネタリーベースが増えると通貨の価値は下がりインフレ圧力がかかります。

相対的購買力平価によると、日本のインフレは円安・ドル高を招きます。
これが為替介入作用の2つ目です。

意外と見落とされがちなのですが、この2つ目のマネタリーの点こそ重要です。
なぜなら、中央銀行の金融政策のプランを狂わすこともあるからです。

為替介入の「不胎化」と「非不胎化」

為替政策と、国内の金融政策は必ずしも同じ方向性ではない可能性があります。

為替政策と金融政策のバランス

中央銀行が為替介入で為替操作をしたいが、市中の貨幣供給量は介入前と同じく一定に保ちたいということもあります。
マネタリーベースに影響を与えずに為替介入できればよいのですが、残念ながら上で図解したように、それは原理的に難しいのです。

不胎化介入という選択肢

たとえば上の例で「日銀が円安にはしたいが、国内の貨幣供給量は増やしたくない」とすれば、どうすればよいでしょうか。

  • 1 円売りドル買いの為替介入で、狙い通り円安にはなります。
  • 2 同時に、日銀のバランス・シートには市中銀行預金(日銀当座預金)が増えます。
  • 3 市中銀行預金もとの量に保ちたいならば、日銀が手元の日本国債を民間銀行に売り、民間銀行は現金によって支払えばよいのです。
  • 4 日銀のバランスシートの負債欄には市中銀行からの当座預金(現金)が減りマネタリーベースが減るので、貨幣供給量は元通りです。

こうすれば、為替介入後に貨幣供給量を元通りに調節しようとするために、外貨の売買は一切必要なく、国内の円だけで取引が完了します。

為替介入は必ず貨幣供給量の変化を起こします。
しかし、それは事後的に国内の日銀と民間銀行の資産交換によって調節ができるのです。

このように、事後的に調節することを不胎化介入、まったく調節しないことを非不胎化介入と言います。

非不胎化介入は2重の手で効果的
より為替介入として効果的なのは、非不胎化介入です。
為替の直接操作と、国内の貨幣供給量を操作する二重の手だからです。
為替政策を見る時には、介入の有無だけでなく今考えたような、マネタリーの面も注目です。

為替介入の効果

為替介入は、為替を操作する効果がありますが、しかしその効果の程度はいまいちわかりません。

為替介入の実績

過去の事例を見ると、1992年のポンド危機の時は、投機筋によるポンドの投げ売りにイングランド銀行が買い支えることができませんでした。

アジア通貨危機の時も韓国ウォンやタイバーツの下落を防げませんでした。

2015年以降は中国人民銀行が元安に対して元の買い支えを行っていますが、結果だけを見るといまいち効果が出ていないようにも思えます。
人民元対ドル
(参考)
みずほ証券HP 外国為替公示相場ヒストリカルデータ
中国 国家外貨管理局HP

また、日米関係に関していえば、歴史的に貿易摩擦があり、為替介入が大っぴらにしづらい状況です。
トランプ大統領は日本や中国に対して、通貨安政策でダンピングをして価格競争力を不当に釣り上げていると非難しています。
ですから直接的な為替介入はなかなか難しいのが現状です。

介入の実績から今後を読めるなら投資のチャンス
しかしながら為替介入が起こりやすい環境にあれば、順張りで中央銀行の流れを読んでそれに乗るのはアリでしょう。
ドル円間だと起こる可能性は低いですが、世界で見れば探してみると面白い発見があるかもしれません。

為替介入の実績を知りたい

介入実績は、日銀の上部組織である財務省のHPで確認することができます。
(引用)財務省HP「外国為替平衡操作の実施状況

2003年頃(小泉純一郎首相)までは比較的実施されていたのですが、 2011年(野田佳彦首相)を最後に実施されていません。(2017年11月)

為替相場は、基本的には、各国経済のファンダメンタルズを反映し、マーケットの需給により市場において決定されるものです。

しかし、為替相場が思惑等により、ファンダメンタルズから乖離したり、短期間のうちに大きく変動する等、不安定な動きを示すことは好ましくないことから、為替相場の安定を目的として通貨当局が市場において、外国為替取引(介入)を行うことがあります。

本統計は、通貨当局が介入した実績額について公表しています。

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