[計算付]絶対的購買力平価と相対的購買力平価とは | やさしい物価と為替レート

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このページでは、購買力平価説(PPP)の理論、絶対的購買力平価相対的購買力平価をやさしく解説しています。

絶対的購買力平価とは

絶対的購買力平価(絶対的PPP)とは、財・サービスなどモノの価格を直接比較することです。

絶対的購買力平価の理論

具体的には、2国間で財バスケットというものを組みます。
その中に、食料品や、家電の価格などを盛り込み、ひとつひとつを2国間で比較します。
財バスケットに含まれているモノの価格が2国間で同じならば、絶対的購買力平価が成立しているということです。

絶対的購買力平価の式

絶対的購買力平価の式は以下の通りです。

P=SP*

これを使えば、購買力平価が成立しているか、現実に確かめることができます。

「計算が面倒だ!3行で!」というあなた
とりあえず式があって、それに日本のコーラの値段と、アメリカのコーラの値段と、為替レートを比べる。
もし相対的なコーラの値段に大きな乖離があれば、どちらかの通貨が過小評価されていたり、過大評価されていたり、歪みがある可能性がある。
それなら後で揺り戻すか、経済の意外な真の姿を映しているかも。

ということだけを理解すればOKです。

絶対的購買力平価が成立しているケース
Pは自国のモノの価格、Sは名目為替レート(いわゆる為替レート)、P*は他国のモノの価格です。
例えば前のページのコーラの例だと、日本でコーラの価格は100円、米国で1ドル、為替レートは1ドル=100円でした。
この場合はP=100円、S=自国の物価/他国の物価なので100円/1ドル、P*=1ドルなので、式は

100円=(100円/1ドル)×1ドル
=100円

となって、絶対的購買力平価は成り立っています。

絶対的購買力平価が成立していないケース
もう1つの例です。
日本では1本80円、米国では1ドル、為替レートは1ドル=100円とします。
P=80円、Sは100円/1ドル、P*=1ドルなので、式にあてはめると

80円=(100円/1ドル)×1ドル
=100円

となって、絶対的購買力平価は成り立っていまません。

絶対的購買力平価が正しいとすれば、短期的にはモノの価格に差異はあっても、長期的には均衡します。
今後、裁定貿易のチャンスを狙ってドル売り円買いが進みますから、これからはドル安円高方向に進むと考えられます。

購買力平価理論と儲け

上の具体例から、2国間で同じモノの価格を為替レート調整分で比較して、もし絶対的購買力平価と大きな差があれば、「どちらかの通貨が過大評価なり過小評価なりされている」可能性があります。

今後為替レートは何かをきっかけにして調整する方向に動くかもしれません。
もしその動きを予測できれば、儲けのチャンスになります。

色々な地域の国のホテルの代金、モノのレストランの料金、時給などを見てみれば、「明らかにおかしい」という数字は見つかります。
為替レートは、このように歪みを映します。
その歪みが、経済の真の姿を教えてくれるかもしれません。

絶対的購買力平価ポイント

絶対的購買力平価によると、2国間であるモノの価格が同じになるよう、為替レートが調整される。

P=SP

自国での価格=為替レート×他国での価格

相対的購買力平価とは

絶対的購買力平価の欠点を補うものとして、相対的購買力平価があります。

絶対的購買力平価の問題

絶対的購買力平価は、財裁定を前提にして、財バスケットを組んでモノの価格一つ一つを2国間で比較するというものでした。
一見合理的なようですが、穴もあります。

それは、財バスケットに組み入れられていないモノについては考慮しないことです。
特に、非貿易財については比較の対象にならないことです。

自動車や小麦のように、比較的自由に貿易できるモノについては財裁定が働いて為替レートが調整されるというのは分かりますが、電気代や水道代、電車の運賃や医療費など非貿易財の比較が為替レートに反映されないのは、大雑把な気がしませんか?

相対的購買力平価と物価上昇率

そこで、相対的購買力平価(相対的PPP)というものがあります。
これは絶対的購買力平価のように財バスケットなどを組みません。

より包括的な経済の動きで考えます。

つまり2国間の物価上昇率(インフレ率)の差が為替レートに反映されるという考えです。
これも背景には一物一価の法則のように、2国間での購買力は等しいはずだという前提があります。

相対的購買力平価の計算式

まずは式を見てみましょう。

⊿Pt=⊿St+⊿Pt*

⊿Ptは自国の物価上昇率、⊿Stは為替レート変化率(自国通貨減価率)、⊿Pt*は他国の物価上昇率です。
⊿Ptと⊿Pt*が同じ、つまり2国間で同じ物価上昇率なら、為替レートは変わりません。
⊿Ptと⊿Pt*に差があるなら、購買力が一定にとどまるように為替レートは変わります。

「計算が面倒だ!3行(以下略
とりあえず式があって、2国間で物価上昇率を比べます。
片方インフレなら、お金の価値が下がりモノの価値が上がっており、片方デフレなら、お金の価値が上がりモノの価値が下がっている。
価値の上がっている通貨と下がっている通貨がバランスを取るように、為替レートが後から調整される。

という理解でOKです。

物価上昇は為替レート

つまり、日本の物価が一定で、米国の物価は上昇した場合であっても、円は米国でモノを買う力がなくなっていくのではありません。
以前と同じような購買力を保てるくらいまで為替レートが調整され、円高ドル安になるということです。

仮に米国の方が物価上昇が進んでいるのに為替レートがもし一定なら、米国から円でモノを買うにはどんどん不利になりますね。
しかしそのようなことは起こらず、やはり世界中でモノの購買力は同じということです。

実際、日本政府と日本銀行は円安政策を進めていますが、日本はバブル崩壊以降、物価はほぼ変わっていません。
一方で、中国や、東南アジア諸国はインフレです。

その結果、日本がアジア諸国から円でモノが買えなくなったかというとそうではありません。
物価上昇率の差を調整するように、円高アジア通貨安になり、購買力は大きく変わらずに来ました。

金融政策の円安誘導の式

相対的購買力平価―日本がインフレになった場合
2013年4月から日本政府と日本銀行は金融緩和を継続してインフレを目指しています。
この狙いは、インフレを起こして円を相対的に安くし、輸出企業への追い風をつくることです。
この狙いを式で表すとこのようになります。


⊿Pt=⊿St + ⊿Pt*
↑=⊿St + →
⊿St=↑

⊿Stは自国日本の減価率ですから、これがプラスということは円安ドル高になるということです。
これなら日本のグローバル企業は有利になります。

相対的購買力平価―日本のデフレが続く場合
しかし、今のところ思うような結果が出ていません。
2016年、日本の消費物価指数は前年比マイナス0.1%、米国はプラス1.3%です。
金融緩和で日本国内に出回るお金の量は増えてはいますが、インフレは起きていません。

今後もこの傾向が維持されれば式、からこのようになります。


⊿Pt=⊿St+⊿Pt*
-0.1=⊿St+1.3
⊿St=-1.4

⊿Stは自国通貨減価率なので、それがマイナスということは毎年1.4%ずつ円高ドル安になっていくということです。
つまり、狙いの円安とは逆に働くということです。

相対的PPPによれば、国内の物価が上がる、もしくは外国の物価が下がり、相対的に日本の物価上昇率が高くなければ円安にはなりません。
国内政策に限って言えば、インフレが起こらない限りどうにもならないのです。

相対的PPPによると、日本の場合、20年間物価は上がっていませんから、円高になりやすいのです。
為替レートを予想したいなら、物価の動きを注視することは欠かせません。

相対的購買力平価ポイント

相対的購買力平価(PPP)によると、物価上昇率の差を相殺するよう、為替レートが調整される。

⊿Pt=⊿St+⊿Pt*

自国の物価上昇率=為替レート変化率(自国減価)+他国の物価上昇率

購買力平価の違いまとめ

いよいよまとめに入ります。

絶対的購買力平価

2国間の物価を比較するために、移動可能な貿易財を数多く採用した物価バスケットを組みます。
2国間でそのバスケットの価格に大きな乖離があれば、裁定取引が働き、平価まで修正されると考えられます。

裁定取引を使った投機チャンスの見つけ方
たとえば同種の自動車や洋服が2国間で全く違う価格なら、裁定取引によって、通貨がバランスよく調整される可能性があります。

絶対的購買力平価の注意点
あくまでも貿易財しか比較できず、電気、水道、宿泊サービスなどの非貿易財は対象になりません。
裁定取引ができなければ「一物一価の法則」は成り立ちません。

また、貿易財でも自由に貿易ができないような状況もあります。
関税や輸出入制限、多大な輸送コスト、市場独占企業がいる、などです。
また、ポルシェやフェラーリのように世界販売されてはいるもののあまりにも数が少ないものは、地域要因というよりもケースごとによって価格にブレが起きやすいので、一物一価は成り立ちづらいです。

しかも、大企業のグローバル化によって、貿易財と非貿易財の境界線があいまいなことがあります。

単に同じものの価格が乖離しているからと言って、「為替レートがあとで調整されるかも?」と考えると、罠にはまる可能性もあります。

相対的購買力平価

2国間の物価を比較するために、経済全体の物価の動きである物価上昇率(インフレ率)を比較します。
絶対的購買力平価のような、貿易財のみに依存しないため経済の動きをより包括的に見られます。

インフレ率を使った投機チャンスの見つけ方
2国間で物価上昇率が大きく違うのに為替レートが据え置きであれば、あとで調整されること可能性があります。

相対的購買力平価の注意点
経済全体の動きを見ると、通貨の相対的な価値の変動だけでなく、その国特有の事情にも影響されてしまいます。

たとえば2014年に日本は物価上昇しましたが、これは経済が強くなったり、お金の価値が下がったというよりも、消費増税の影響です。

このように、物価上昇率だけでなく、その国特有の事情を見ながら判断するのが良いでしょう。

絶対的購買力平価と相対的購買力平価のどちらを重視すべき?

これまでの解説のように、どちらも一長一短です。
どちらかに頼らず、むしろあなたの判断で、どちらも使い分けるのが良いでしょう。
客観的な分析ができ、より深い発見ができそうです。

購買力平価まとめ
  • 「世界中どこでもモノの価格は同じになるはずだ」
  • 「短期的には価格の変動があったとしても裁定取引によって長期的には為替レートがそれを調整するように変動する」(絶対的購買力平価)
  • 「物価上昇率が違えば、2国間通貨が減価・増価して為替レートが調整される」(相対的PPP)
参考になった本。
初心者にもわかりやすく書かれています。

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