競争戦略で成功している企業とビジネスモデルを解説します。
競争で圧勝している企業の戦略には「勝ちパターン」があります。
規模の経済性つまり高いシェアと囲い込みがどちらもうまくいっているとき、その企業の競争優位性は非常に強力で、なおかつ長続きすると予想されます。
つまり強力かつ持続するフランチャイズです。
他社がいくらコストをかけてもその収益力を超えるフランチャイズを再度作るのが難しいのです。
経営者なら、どうしてもそのような勝てる事業を育てたいでしょう。
投資家としては、ぜひともそのような堀を持っている企業に投資したいものです。
目次
競争戦略の成功ヤフージャパン
競争戦略での具体例です。
ヤフージャパンは超需要面で競争優位性を持っています。
国内の検索エンジンとしてはGoogleとシェアが約半々ですが(ヤフー検索の内部はGoogleが一部技術提供している)、ポータルサイトとしては言うまでもなくトップです。
世の中で起こっていることが今すぐ気になると考えたとき、スマホで気軽に調べることができます。
トップニュースが一覧で見やすく、扱っている内容も世の関心を集めるネット版NHKのような模範的内容で、バランスよく情報収集できます。
本や雑誌や新聞やテレビなどに比べて利便性が高いのはもちろん、ポータルサイトとして内容も充実していますから、他のMSNニュースやGoogleニュースなどに比べてより魅力的なのです。
そして、隙間時間などにふと気になってヤフーにアクセスする人も多いでしょう。
それは意識的にヤフーを選んでいると言うよりはもはや習慣化してしまっているからそうするのです。
顧客になぜヤフーを使っているのかと聞いれても「なんとなく」という答えしか返ってこないでしょう。
特に理由もなくその商品を使うということが習慣化している証拠です。
新規参入の他社からすればその習慣をうち崩すのは困難です。
ヤフージャパンはその集客力からニュースサイトやポータルサイトビジネスを手を広げ、旅行や動画配信やショッピングなど幅広い事業にも参入しています。
そしてそれらでは非常に成功を収め高収益を維持しています。
20%以上の営業利益を得て、約3兆円の時価総額に対して毎年1000億円以上の営業キャッシュフローを稼いでいます。
これは他社を寄せ付けない堀を持っているとも言えるでしょう。
巨人GAFAの競争戦略
その他にも似たようなビジネスで言えば、Google、YouTube(親会社はGoogle)、Facebook、Amazonなどが挙げられます。
これらのサービスはサーチコストやスイッチングコストはあまりかかりません。
ネットですぐに検索でき、生命保険や住宅ローンのようなわかりづらいプランなどはありません。
YouTubeからニコニコ動画に切り替えるのに手間も無いでしょう。
グーグル検索からBINGに切り替えるのも同様です。
しかし、圧倒的なシェアを背景に規模の経済性を握っていますし、またユーザはそれらのサイトにアクセスすることが習慣化しています。
これもビジネスとしては強いフランチャイズを持っていると言えそうです。
これらの企業は、優秀なエンジニアを育成したり雇うコストは莫大ですし、またデータを維持するためのサーバー費用も非常に莫大です。
しかしそれを補って余りあるくらいの高収益をあげています。
マイクロソフトのマーケティングモデル
これらなどの企業に加えて、スイッチングコストの点でも優れているのがMicrosoftやアップルです。
両社とも圧倒的なシェアはもちろん顧客が習慣的に使っています。
MicrosoftのウィンドウズのOSや、Word、Excel、PowerPointに使い慣れた人が他のソフトを覚えるのは面倒です。それは時間のロスであり、コストです。
またふつう、学校や会社や個人でもウィンドウズ系統のソフトを前提に仕事を進めている人が多いため、それらを別のソフトに切り替えるにはまさにシステムを総取り替えしなければならず非常にコストがかかります。
アップルのマーケティングモデル
アップルも同様に、たとえばiPhoneやMacノートを持っている人はアップルのクラウドを使うことで、いつでもどこでもどんなデバイスからでも快適にコンテンツにアクセスして効率的に仕事を進めることができます。アップルから切り替えるという事は、今まで蓄積してきたその利便性をいったん捨て、新たに環境を作り直さなければなりません。
このような、高シェアかつ囲い込みができている企業は、強力なフランチャイズを持つことができます。
投資家として見た時、今上げたような超巨大企業は既に株価が十分高くなってしまっており、手を出しづらいです。
未来のアップルやグーグルが無いものか気になるところですが、希望は確かにあります。
競争戦略で勝つべく勝つ最強の中堅企業
特定のジャンルでトップを握っている企業に競争戦略のヒントがあります。
たとえば医療情報のポータルサイトを提供しているエムスリー。
約29万人の医師のうち20万人以上が関連サービスに登録していて、医薬品の情報収集、転職情報、医療情報をそこから習慣的に得ています。
医療情報の圧倒的ポータルサイト
日進月歩の医薬品情報のマッチング
医薬品業界ではMR(Medical Representative)という言葉があります。
これは製薬会社が日々新しく解禁された新薬や、病院での治療に必要な医薬品情報を、専門的立場から医師にアドバイスする活動です。
医師と言えど、日進月歩の医薬品情報に追いつくのは大変です。
超多忙な中で学会、研究会、製薬会社の担当者から情報収集をしています。
また、製薬会社からしても、医薬品に精通した専門人材を教育し、病院に送り込んで営業させるのは大変な労力であり人件費もかかります。
そこでエムスリーは「MR君」という医薬品のポータルサイトを立ち上げ、登録した医師に、製薬会社が的確なMRの情報提供をWEB上でできるというサービスを立ち上げました。
ネット上のMR代行です。
これは医師にとっても大幅な時間の節約になり、製薬会社からしてもコスト削減になります。
ドクターどうしの情報交換
エムスリーはMRだけにとどまりません。
「アスクドクターズ」という、医師どうしが治療法などの情報交換ができる掲示板サイトを持ち、有料会員は20万人を超えています。
また、「エムスリーキャリア」という医師、看護師、薬剤師など医療関係者向けの転職サイトも持っています。
転職エージェントの手数料は年収の15~20%が相場で、医療関係者は比較的高収入ですからおいしいビジネスです。
他にも治験情報を管理するシステムを提供する、エビデンスソリューションというビジネスも行っています。
医療業界の中では、圧倒的なシェアを持ち、もはや無くてはならないインフラ化しています。
これだけの地位を得れば、もはや他社が参入した所でスイッチされる心配はほぼないでしょう。
エムスリーの驚異的な業績
収益力は驚くべきです。
継続的に30%近くの税引前利益を上げ、2017年3月期では780億円の収入にたいして160億円の営業キャッシュフローを稼ぎました。
ここ5年間、ROEは継続的に50%を上回っています(日本企業の平均はひとケタ)。
残念ながら、時価総額が1兆円にもなってしまった今、PERも50程度であり割安かどうかは判断が難しい所です。
しかし10年前は、時価総額わずか600億円程度だったのです。
このような企業が世にあるという事は投資家にとって希望が持てることです。
- 競争力を得るには規模の経済と囲い込みの両立
- 超大企業のGAFAも同様のマーケティング戦略
- マーケティング戦略に成功すれば安定した高収益につながる
競争戦略とフランチャイズ
競争戦略の勝ち方が分かったところで、ここからはフランチャイズについて解説します。
ビジネスで圧倒的に成功してる企業の具体的な事例も交えて解説します。
他社との競争で悩んでいる方は、ヒントになるはずです。
フランチャイズは、他社が真似できない競争優位によって、他社を上回る超過利益をもたらしてくれる特権です。
ふつうビジネスとは競合他社との終わりなきイタチごっこですが、そのレースから解放してくれる守り神です。
- 競争戦略の点では、他社が同じような費用をかけてプロモーションや製品販売をしたとしても、シェアや利益を崩すことができずに対抗するのを諦めさせるような自社の圧倒的な強みのことです。
- マーケティングの点では、原材料費や人件費や広告費などの経費以上のプレミアム――それも他社よりも高い――を、顧客が喜んで支払いたいと思わせるロイヤルティです。
- 会計の点で言えば、資産価値を上回るほどの利益を可能にする如意棒です。
フランチャイズとは、他社が全く同じ製品を同じコストで作り、同じようにプロモーションを行ったとしても、顧客がより多くのプレミアムを自社製品にだけ支払わせる不思議な力を持っています。
コカ・コーラの競争戦略
たとえばコカ・コーラは、味が似ている商品は山ほどあります。
価格も味も似ているペプシや、大手小売店の味も似ていて価格ははるかに安いプライベートブランドなど。
しかし、どのコーラを買うか選ぶとき、コカ・コーラブランドは最も多くの顧客を引き付けます。
これは、コカ・コーラを魅力的に見せ、プレミアムを支払わせるフランチャイズを持っていると言えます。
アップルの競争戦略
iPhoneも同様で、機能が似ていて格安の格安スマホは山ほどあります。
中国では、シャオミ(小米)という、徹底的にiPhoneを真似した格安ブランドがあります。
当然、iPhoneの機能がなければ絶対に困るという人もいるでしょう。
しかしiPhoneの顧客の中には、格安スマホの機能でも問題はないが、高い金を払ってでもiPhoneでなければ気持ち的に嫌だという人も多いはずです。
これも、顧客に多くのプレミアムを支払わせる力です。
競争とフランチャイズの収益の仕組み
フランチャイズが、どのようにして特権的な収益を得られるのか、フランチャイズと差別化、ブランド化と比べながら解説します。
利益は収入と費用の差
通常、下の式が成り立ちます。
フランチャイズ企業は、他社と費用は同じなのに、より多くの顧客を引き付けるので、収入が増えるのです。
だから他社よりも利益に優位性があります。
これは資産についても同じことです。
つまり、同じような生産技術や生産設備などの資産を持っているのに、自社の方が収入が多く、したがって他社より資産効率も高いのです。
当然、収益力も高くなります。
差別化やブランド化との違い
差別化やブランド化とは似ていますが、それらとは決定的に違います。
競争戦略と差別化
差別化は、機能やデザインや利便性やアフター保証によって生まれます。
もちろん無限のバリエーションがあります。
しかし、それは必ずしも利益に結びつくとは限りません。
いわんや、他社が真似した時に他社以上の超過利益をもたらしてくれるとは限りません。
デザインが違っても、いくら頑丈でも、その差別された強みに対して、顧客が喜んで高い値段を支払い、なおかつ、他社が全く同じことをしても、自社にだけプレミアムを支払わなければフランチャイズではありません。
それはイタチごっこの一環で終わってしまいます。
差別化はいくらでもできますし顧客ニーズを満たす方法も無限の方法があります。
しかし、それが超過利益に結びつかなければ一時的な目新しさにすぎないのです。時には有害ですらあります。
ビジネス上の優位を生まない無駄な差別化のために経営資源をつぎ込んでしまえば、ただ資源を浪費して終わるからです。
むしろフランチャイズを構築するために経営資源を投入しなければなりません。
競争戦略とブランド化
ブランド化も同様で、フランチャイズとは違います。
ブランドは、受けられる品質やサービスに保証を与えてくれます。
プロモーション戦略によって高級感を演出し、減価の100倍の値段で顧客に製品を買わせる力もあります。
しかし、ブランド化それ自体には意味がありません。
ブランドを演出しても、知ってるけど絶対買わないというものはいくつもあります。
広告費に見合う集客効果があり、それが利益に結びつかなければ意味がありません。
また、利益を出すだけでもダメです。
なぜならそれを見たライバルが、その手があったかと真似するからです。
他社も同じようにプロモーションに費用をかければ、ふつうブランド化は真似できるのです。
レクサスやグッチもそれは演出できるのです。
フランチャイズは収益力に差が出る
しかし、フランチャイズが優れているのは、他社が同じことをやっても、真似のできない収益性を自社だけに与えてくれることです。
根本的に収益力に優位性があるのです。
差別化やブランドとはよく語られる便利なワードですが、しかしそれでは不十分です。
企業の生み出すキャッシュに興味のある投資家は、「で、それでいくら儲かるの?」と訊きます。
それに対して、「他社に比べてこれだけの超過利益がある」と言えば、それはライバルよりもよい投資先になります。
平凡なビジネスに競争戦略の宝が眠っている
フランチャイズは、このように差別化やブランドと近い意味の言葉ですが、まったく違うという事を認識しなければなりません。
有名だし個性的だけど儲かっていないというビジネスは山ほどあり、投資家はそれを避けなければなりません。
むしろ、平凡だしシンプルなのになぜか他社よりも儲かっているビジネスに、投資のチャンスが眠っています。今
やコカ・コーラやスターバックスと聞いてその力に疑いを持つ人はいません。
未来にそのように化ける可能性を秘める企業もあるはずです。
しかしセリアは継続的に10%近くの営業利益を稼ぎ、ABCマートは継続的に10%以上の純利益です。
デフレや人口減少などを背景に西友やダイエーやイオンなど総合スーパーが落ち込んできている中で、何故このような専門店がこれほど強いのでしょうか。
意外なところに、フランチャイズの魔法が潜んでいるかもしれません。
- フランチャイズとは、競争でライバルが追いつけない超過利益を上げさせる特権
- ブランド化や差別化は、競争で優位に立ちライバルを超える利益につながってこそ意味がある
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