このページでは、「マーケティングとは」「マーケティングを生かした競争戦略のヒント」をわかりやすく解説します。
マーケティングというと、多くの用語を耳にして覚えるのが大変だと感じるビジネスパーソンの方もいらっしゃるでしょう。
しかし本質はとてもシンプルで、あらゆるマーケティング戦略は、最終的にこの2つに収束します。
- 顧客ニーズ
- 競争優位
一見単純のようですが、実践は難しいです。
ビジネスの競争の中では、これらのポイントでライバルよりも優れていなければシェアを奪われてしまいます。
闇雲に経営努力をしても絶対にうまくいかないのですが、ポイントを外さなければしっかり競争することができます。
- マーケティングでおさえるべきポイントは何か
- 顧客ニーズはどのようにつかむのか
- どのような戦略で優位性を獲得するのか
これらのエッセンスを解説します。
目次
マーケティングとは何か
マーケティングの意味は、
です。
マーケティングの発端
「マーケティングとは何か」の前に、「マーケティングでないもの」について触れた方が理解しやすいので、簡単に解説します。
今でこそマーケティングという言葉が当たり前になっていますが、それ以前は「セリング」で「いかに売るか」ばかりを考えて、供給側の論理を顧客に押し付けるのが当たり前でした。
背景には、安定的に供給できるメーカーの数が少なく、顧客にとって選択肢が少なかった供給者優位の状況がありました。(T型フォードのような、完全に1つの規格の量産車が代表)
しかし経済が発展し、様々なメーカーが登場していきます。
同時に、消費者も目が肥え、多少の贅沢をしてでも自分好みの商品が欲しいという欲求が増してきます。
つまり消費者が強くなっていったわけです。
そこでメーカーは今まで通りのセリングだけではダメで、市場(=顧客)志向になるという意味で、マーケティングが必要になっていきました。
セリングは供給側、マーケティングは需要側(顧客)です。
ご存知のように、今は完全に顧客志向でなければ会社は即潰れます。
マーケティングと顧客ニーズ
マーケティングの出発は、「顧客の求めるニーズは何か」です。
つまり顧客の欲求がすべてで、企業はまず顧客を理解するのがスタートです。
マーケッターが行動ファイナンス、行動心理学、認知科学、意思決定論など人間心理を理解する必要があるのもこのためです。
顧客ニーズを理解するには様々な方法があります。
- アンケート(製品を買った、来店した顧客へ直接する)
- テスティング(未発売の製品を試して感想を聞く)
- 統計を取る(顧客の購買や来店履歴など)
特に最近はスマホで購入、閲覧、行動、検索、などの履歴データを収集することが容易ですから、個人の行動を分析した上で、個別に最適な提案をするような方法が主流です。
また、USJを復活させた森岡毅氏のように、ビッグデータなどの数字を徹底的に分析し、顧客を理解して戦略策定につなげる手法もあります。
USJの場合は、10月に集客アップを狙って成功したのですが、その理由は「10月は夏休みのレジャー、冬のクリスマスなどイベントと離れているのに魅力的な遊びがそれほど少ないから」でした。
そこでハロウィーンを利用して、恐怖のアトラクションでの絶叫でストレス発散をしてもらったり、日常と違うコスプレを促せば、かなり集客効果と満足感を期待できると考えたのです。
テレビコマーシャルも、公開前にモデル数人に実際に試聴してもらい、その脳波を測定して最も効果的な映像に仕上げる企業もあります。
たとえばカメラを向けられるシーンは、視聴者にとって「監視されている」と緊張・不快感を示すデータが出るのでふさわしくないことがわかっています。
セブンイレブンは、出店予定地付近で街を行く人々の数や方向をカウントして見込み客の数を計算します。
市街地でセブンイレブンが近くにいくつも出店しているのをよく見かけるのは、1つビルや通りを挟めば、「人の流れが全く別だから」です。
そこまでやるのかという感じですが、顧客ニーズを外した商品は絶対に売れないので、企業は心血を注いで顧客の欲求を探しています。
マーケティングと競争優位
顧客ニーズを突き止めたとして、企業はニーズを満たすための商品やサービスを開発します。
しかし、考えるべきはもうひとつあります。
それがライバル社です。
ライバル社よりも自社製品の方が優れている、好きだ、と顧客に思ってもらえなければ、シェアは奪われてしまいます。
だからと言って、闇雲に全部ライバルに勝とう、というのでは戦略として無理があります。
そこで、ポイントを絞る必要があります。
- 顧客の選好度(好み)
- 顧客の認知(知名度)
- 配荷(顧客が欲しい時に手に入るか)
この3つの点で勝負するのです。
すべてで勝てればベストですが、必ずしもすべてで勝つ必要はありません。
しかし、ひとつも勝っていなければ間違いなくシェアは取れません。
競争戦略と選好度
この選好度は、商品や企業ブランドに対する「好み」「購入意欲」「イメージ」といった顧客の嗜好です。
企業は競合他社の製品と比べて、
- いかに自社のブランドを好きでいてもらうか
- いかに自社ブランドが優れていると認識させるか
- いかに価格に割安感を与えるか
このように、「顧客が店やネットで商品を比較する時に、他社よりも購買に結びつける魅力」が選好度です。
マーケティングで選好度はシェアに直結します。
ブランド化も差別化も、すべては選好度アップのためになされるべきです。
競争戦略と認知
認知も、競争では重要です。
顧客にいくら愛される商品を作っても、商品を知っている顧客がわずかであれば事業の拡大は難しいでしょう。
選好度は重要ですが、同時により多くの見込み客に、自社の商品を認知される仕掛けも重要です。
テレビCMや新聞広告、ネット広告など、自社ブランドを認知させるのがプロモーション戦略です。
プロモーションによって、見込み客の自社ブランドの認知、製品ブランドの認知、そして自社への選好度も高めるわけです。
売り上げ規模が数兆円で、誰もが知っている企業は、広告費だけで年間数百億円~数千億円を費やしています。
日立の「この木なんの木」のCMで有名な木がありますが、あの木の状態を維持するために年間5000万円がかかっています。
・J-CASTニュース 「この木なんの木」維持費は年間5000万円 「ふしぎ発見!」草野氏が明かす
https://www.j-cast.com/2016/11/08282766.html?p=all
・写真は日立製作所HPから
競争戦略と配荷
配荷とは、要するに「顧客が購入したい時に簡単に入手できるような状況にあるか」です。
TVCMや口コミで商品の情報を聞いて、いざコンビニやスーパーに行っても、取り扱いがなければ購入に結びつきません。
ネット通販なら、「WEBページ上で見つけやすい配置をされているかどうか」や品切れや配送の可否も戦略のポイントになります。
コンビニやスーパーは物理的に陳列スペースが限られています。
そこで、メーカーや卸会社の営業が、自社の商品の扱いを増やしてもらおうと熾烈な戦いをしています。
ただ、店からすれば営業の熱意はあまり重要ではなく、「売れる商品を優先的に扱いたい」のが当然です。
そこでマーケティング戦略では、やはり顧客が買いたいと思うか=選好度が決定的なカギになります。
選好度がマーケティングの要
競争優位の戦略には、選好度、認知、配荷があると解説しました。
一番重要なのは、選好度です。
たとえばいくら全国で知名度が高くても、悪いブランドイメージなら売れません。
いくら店舗で自社製品が扱われていても、顧客がライバル社の製品よりも買いたいと思わなければ意味がありません。
一方、選好度が高ければ、口コミなどで自然に認知も広がっていきますし、小売店も取り扱いを増やしたいと考えるに決まっています。
そこで、顧客の選好を得てマーケティングで成功しているケースをいくつか紹介しましょう。
選好度のマーケティングーコカ・コーラ
コーラと言えば、言うまでもなく「コカ・コーラ」です。
競合はペプシ、日本ならスーパーやコンビニのプライベートブランドですが、コカ・コーラのシェアは安定的に90%です。
コスト優位なわけでもありません。
コカ・コーラだけが特別おいしいわけではありません。
とある調査で、コカ・コーラとペプシコーラを、どちらかわからないように比べて飲んでもらったというテストがありましたが、何も知らずに飲んだ人の多くは、「ペプシコーラの方がおいしい」と答えたそうです。
しかし、ブランド名を知った上で飲めば、コカ・コーラの方が圧倒的においしいという回答を集めました。
2004年の米国ベイラー医科大学モンタギュー博士らによる論文
これは製品パフォーマンスではペプシコーラの方が優れていても、コカ・コーラのブランド力が圧倒的で、選好度で勝っているからです。
コカ・コーラの特徴は、製造や流通は世界中のフランチャイズに任せ、本体はブランド力維持のためのプロモーション戦略に特化しているモデルです。
日本ではコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社が国内のグループ会社を統括し、さらに下に製造・物流・配送などを担当する「コカ・コーラ ボトラーズジャパン社」や自販機の管理をする「コカ・コーラ ボトラーズジャパンベンディング社」などが存在します。
製品パフォーマンスや価格で差別化が難しい商品で、人気を維持するにはプロモーションがすべてです。
実際、「コカ・コーラの広告はそこまでやるか」というほど厳格なルールがあります。
看板の色、泡の比率、水滴の数に至るまで。
これらはブランド力を維持し、選好度を落とさないマーケティング戦略です。
コストのマーケティングーユニクロ
ユニクロは低コスト戦略です。中国やバングラディシュなど人件費の安い工場で大量に製造し、数千店を構え、また売り場を広くすることで規模の経済も生かしています。
もちろん、カシミヤのセーターやヒートテックなど、製品の質に優れた商品も多数抱えていますが、質の割に安さを追求する点で、低コスト戦略が強いです。
しまむら、ニトリも同様に大型店で、規模を追求して低コストを実現しています。
少量よりも大量に同じものを製造する方が、相対的に固定費が減るため、1つ当たりコストが節約できること。
レストランでハーフサイズの方が割高なのは、原材料費などの変動費にたいして、人件費や電気代などの固定費の比率が高くなってしまうため。
マーケティング戦略まとめ
ここまで、マーケティングの戦略のポイントをお伝えしてきました。
- 顧客ニーズ
- 競争優位
と、シンプルすぎる話ですが、マーケティングをより深く学んだり、事業のプロになればなるほど、この当たり前すぎる原点を忘れがちになります。
マーケティングの大家は、フィリップ・コトラー教授です。
マーケティングのメッカであるケロッグ経営大学院でも教鞭をとっています。
そのコトラー教授が、高度な統計やマーケティングを学んできた学生たちの卒業の場で伝えたことは、 この当たり前すぎる2つの原点だったのです。
マーケティングは、セリングと逆で顧客志向の売れる仕組みづくりの総称
マーケティング戦略のポイントは2つに収束
- 顧客ニーズを満たす
- ライバル社との競争優位
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