アンジェスの企業価値を分析してみた

h研究室フラスコ

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このページでは、バリュー投資家の私が冷静にアンジェス(東証マザーズ4563)企業価値を計算してみます。

なぜアンジェスが気になったのかというと、2017.11.27(月)にストップ高をつけ、本日28日も出来高が大幅増になっていて、さらにツイッターで有名な投資家も買い煽りをしていて、私も「一体何があったのだろう」と興味を持ったからです。

株式市場では短期的な株価の上下は毎日のようにあることですが、企業の価値を大幅に乖離することが少なくありません。

私はトレンドのことはよくわかりませんが、バリュー投資家として無粋なのを承知で、あえてアンジェスの企業価値を淡々と分析します。
結果は、「恐るべき半自転車操業の超リスク企業」でした。

アンジェスの企業価値

アンジェスの企業価値を計算していきます。

アンジェスとは

簡単に、アンジェスという企業について触れます。

アンジェスは1999年創業の創薬バイオベンチャーです。
大阪大学医学部の教授らが立ち上げました。

2002年には上場を果たし、大学発創薬ベンチャーの先駆けです。

ただし2007年までざっと振り返り、一度も黒字になったことがありません。

財務状況は非常によろしくないです。

にもかかわらず、今回これだけ株価が上がった背景には、11.24にアンジェスによるリリースがあります。

治療薬の開発が実を結び、販売にまでこぎつけることができそうだということです。

2017.11.24 開発プロジェクトの進捗状況に関するお知らせ

重症虚血肢を対象とした HGF遺伝子治療薬※1※2の開発を進めてまいりましたが、大阪大学医学部附属病院の主導により先進医療B制度※3の下で実施された医師主導型臨床研究※4において

申請が可能となる結果を得ることができたことから、準備ができ次第、厚生労働省に対し再生医療等製品※5の製造販売承認申請を行うことといたしました。

このリリースを受けて、翌週11.27から11.28にかけて市場は前向きに反応し、取引が賑わいました。

11.27はストップ高、11.28も出来高が爆発的に増えました。

ただし、11.28は下げて終わっています。
少し上がりすぎたのに対し、そこまで期待が持てないという不安もあるようです。

アンジェスの財務諸表を分析してみた

大まかなトレンドはこの通りですが、ではアンジェスの投資先としてみた場合の企業価値を分析します。

これで、企業価値に対して今の株価が割安なのか、割高すぎるのかがわかります。

貸借対照表

細かいところまで見てはきりがないので、大まかにポイントをつかみましょう。
バランスシート(貸借対照表)の資産欄です。


(単位は1000円)

1 1年間で現金が半分近くに減っている。
→現金の流入に対して流出が多く、苦しい経営状況がわかる。

2 総資産に対して、流動資産が多く、固定資産が少ない
→支出はほとんど研究開発の費用として消えてしまっており、特許などの価値ある資産を築き上げていない。

アンジェスは研究開発が主体の創薬ベンチャーです。
多くの製薬会社同様、研究開発費は膨大にかかり、その結果として効果のある新薬などを開発し、製造販売にこぎつけられれば文句はありません。

無事特許などの成果に結びつけば資産として計上されますから、ただの人件費として垂れ流していた開発費も会社の目に見える財産として形に残るわけです。

しかしアンジェスの場合は、まだ成果につながっておらず、収益も伸びません。
そこで支出ばかりが先行し、資金繰りも厳しくなっている現状が浮かびます。

バランスシート(貸借対照表)の負債欄です。

経営が厳しいのは資産欄でもわかりましたが、ここでより具体的な話になります。
負債欄とはつまり、資金調達の方法を示します。

ポイントを挙げましょう。

1 自己資本比率が高く、実質無借金経営
→資金繰りが厳しい時は株主だけでなく銀行や社債など多様な調達方法を確保したいが、融資元を見つけられていないため資金調達が不利

2 利益剰余金が著しくマイナス
→累積の赤字を意味する。つまりずっと赤字

3 新株予約権が大幅に減少
→新株予約権は、「今が高値だ」と思うから行使する。
これから上がるなら、行使せず待つはず。
つまり株主からは「将来性に疑問がある」と思われているということか、資金調達に困っているということ。

損益計算書

アンジェスの損益計算書を見てみると、
5億円を稼ぐために、400億円の研究開発費を費やしています。
→その他もろもろの費用のことも考えれば、収入が100倍になってやっと収支がトントンです。

アンジェス・pl

495億円の時価総額で、当期純利益が470億円のマイナスがそもそも異常です。
損益計算書を見ても、やはり多額の研究開発費に対して収益が少なすぎるという問題が見えてきます。

キャッシュフロー計算書

企業価値を測るとき、キャッシュフローは最もごまかしがききづらいので重宝します。

アンジェスcf1

アンジェスcf2

これを見ても、やはり本業である「営業活動によるキャッシュフロー」は大きなマイナス。
事業の継続に欠かせない「投資活動によるキャッシュフロー」も8億円で、収益は5億円ですから全く回収できていません。

「財務活動によるキャッシュフロー」は資金調達や株主への還元を意味しますが、営業活動と投資活動の合計の約580億円に対し、調達額が480億円です。

本業や投資でのマイナス分の穴埋めを、新株式発行で賄っているという構図でしょう。

財務諸表を読むと、いかに経営がボロボロなのかがわかります。

(引用)アンジェスHP 有価証券報告書 2017.3月期

アンジェスの危険な資金調達

これだけ経営が厳しいアンジェスですが、なぜ散々な赤字を出しながらも生き延びているのでしょうか。

生き残りのカギは新株発行にあります。

アンジェスは頻繁に新株予約権の発行(第3者割当=引き受け手が決まっている)を繰り返してきています。

新株予約権とは
新株予約権とはいわゆるストックオプションのことです。

たとえば新株予約権は1権利を10円で買い、株価が100円になってから権利を行使すれば予約権を株式に交換できます。
この場合、投資家は行使直後に株を市場で売れば、差し引き90円の儲けです。

ただし、オプションというくらいですから、権利の行使に「権利行使価格」という費用を企業に支払うケースもあります。
上の例で行使価格が20円なら、投資家の儲けは100-10-20=70円です。

アンジェスの新株予約権での資金調達方法

アンジェスの資金調達は、この新株予約権をフルに活用した方法です。
銀行借入れや社債も発行できる魅力はありませんし、事業の利益で調達することもできていないため、新株予約権への依存といっても良いかもしれません。

仕組みはこうです。

1 まず新株予約権を特定の第3者に売却します。
→ここでアンジェスは発行収入を得る。

2 購入した投資家は、権利を取っておいたり誰かに売却せず、すぐに権利を行使します。
→投資家が支払う権利行使価格が設定されているので、行使価格分がアンジェスの収入に。
→また、投資家は権利を使って新株を買うので、1株当たり市場の株価並みの価格を支払うためアンジェスの収入に。(これが一番大きい)

このように、第3者の投資家が一度は新株予約権を買うわけですが、すぐに権利行使して新株に交換しています。
これはすこし遠回りをしただけの実質的な第3者割当増資です。

あえてこのような手間を踏むのは、
1 純粋な増資だと株が希薄化するため既存株主へのダメージがあることを、見かけ上ふせぐことができる
2 赤字企業である以上株そのものの魅力は低いので、投資家を引き付けるには新株予約権で「行使もできるし、予約権を売却もできるし、行使せず将来株価が上がるまで投資家のタイミングで待てる」という、投資家に自由な選択肢を見せる

このような狙いの苦肉の策です。

現実を調べて見ると、割り当てられた新株予約権は、翌日に多数が権利行使されています。
ということは、「将来の業績見込みが悪いと投資家は考えている」と言えます。

企業経営者の気持ちは痛いほどわかりますが、既存株主からすれば面白い話ではありません。

赤字企業の企業価値の実体と、株価が乖離したマネーゲームになってもおかしくありません。

アンジェス企業価値のまとめ

私の結論です。

1 収益の基盤も無い、赤字垂れ流し、資金調達は新株で賄い続けるボロボロの財務
2 将来性のある成長企業と言ってしまえばそれまでだが、好材料があったところで挽回できるレベルの赤字とは断言できない

企業価値評価の方法として、バフェットにならったバリュー投資マッキンゼーアンドカンパニー流の「企業価値評価」方法に従えば、企業価値は「企業が現在抱える資産と」、「将来生み出す現金」です。

前者は論外。
後者は、これまでの実績をもとに未来を予測するわけですが、実績などないに等しいどころかマイナスです。
これでは企業価値が計測不能、あるいはマイナスです。

要は、特許や販売で当たればデカいが、当たる根拠など何もないばくちです。
これは投資でも何でもありません。

「資金調達方法が実質的に新株予約権のみで、新株予約権を発行しても、翌日に行使して市場で売却される事実」が魅力の低さを証明しています。

100歩譲ってトレンドに乗って短期的に売買するにしても、間違っても「将来一山当ててくれるかも」という淡い期待を持って、塩漬けになる前に逃げるのが賢明と思われます。

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