CAPM(資本資産評価モデル)を計算式とベータでわかりやすく解説

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CAPMとは、株主資本コストを計算する指標。「資本資産評価モデル」と呼ばれる。10年物国債などのリスクフリーレートに、株式市場インデックスとの乖離であるベータ、そして市場リスクを組み合わせて計算する。企業が投資先としてリスクが高ければベータが増え、資本調達プレミアムが膨らむことになる。

CAPM=リスクフリーレート+βi×マーケットリスクプレミアム(%)

こんにちは!
アキです。

アキ

この記事では、CAPM(Capital Asset Pricing Model|資本資産評価モデル)について解説します。
ROEとの関係にも触れていきます。

アキ

元証券アナリストでファイナンスに詳しい村田さんに教えていただきます!
村田さん、よろしくお願いします!

アキ

アナリスト村田

村田です。
投資家も経営者も気になるのが、投資効率と投資コストです。
それを知る上で、CAPMはとても役立ちます。
投資家や経営者、財務担当者だけでなく、ビジネスパーソンなら知っておいて損はありません。

CAPM(資本資産評価モデル)の意味

まずはCAPMの意味を教えてください!

アキ

アナリスト村田

はい、CAPMとは資金調達のコストを測る重要な指標です。

CAPMは資金調達コスト

アナリスト村田

CAPM(Capital Asset Pricing Model|資本資産評価モデル)とは、「株主からの出資に対して、どのくらいの株主還元があるべきなのか」を測るモデルです。
株主へ還元なければならないお金は、企業にとってみれば「資金調達のコスト」と言い換えられるってことですか?

アキ

アナリスト村田

まさにその通り。
特に「コーポレートガバナンス」が叫ばれる今の時代ではますます必要な考え方です。

アナリスト村田

企業は資金調達をするとき、1 株主からの出資か、2 銀行や社債などの負債の2通りの方法があります。

アナリスト村田

負債であればわかりやすく、調達コストは利息です。
出資(株主資本)の場合、配当や自社株買いなどの株主還元がコストです。
そこでCAPMとは後者の話ですね?

アキ

アナリスト村田

そう
「株主からの出資を得るための資金調達コスト」=「株主に対して支払わなければならない還元分」を計算するためのモデルです。

純利益は株主に帰属するのものであるため、ある程度は株主還元に回すことが期待されています。

株主からすれば、日経平均や10年物国債など他の投資先であれば安全に利益を得られます。
それなのにわざわざリスクをとって特定の銘柄に投資しているのですから、当然他の銘柄を上回るリターンをあげられなければ意味がありません。

CAPMはこの「最低限このくらいは必要だと期待されているリターン」資金調達のコストと考えるモデルです。

ということはCAPMを下回るリターンしかないと、投資先としては魅力がないってことですね。

アキ

アナリスト村田

まあハッキリいえばそういうことです。

CAPMとROEの関係

株式投資の指標ではよくROEが使われますよね?
CAPMとの関係はどうなんですか?

アキ

$$ROE=\frac{当期純利益}{株主資本}$$

アナリスト村田

ROEとは、株主資本に対する当期純利益です。
株主にとってのリターンを表わす、最も基本的な指標です。
「資本をどれだけ効率的に純利益に結びつけているのか」がわかるで、非常に便利な指標であるのはまちがいありません。

アナリスト村田

しかし、ROEはリターンとコストのうち、リターンのみなので株主利益の一面にしかすぎません。

アナリスト村田

「利益を得るために投入した資金を調達するためのコスト」(=CAPM)も考えなければなりません。
原価割れのものはいくら売っても赤字なのと同じように、還元要求がすさまじいのに、わずかなROEでは良い投資先ではありません。

アナリスト村田

企業価値を高める方法には2通りしかありません。
リターンを増やす、コストを抑える、です。
ROEはリターン側、CAPMはコスト側ということですね。

アキ

アナリスト村田

その通り。
CAPMとROEをセットで使う
これが良い経営判断、投資判断です。

トレーダー朝倉

この話、よくわかるなあ。
あ、トレーダーの朝倉くん!
今日はまだ市場が開いてるのに大丈夫?

アキ

トレーダー朝倉

ああ、最近は軽めに参加してるからね。

トレーダー朝倉

ところで、今の村田さんの話。
日経平均が3%の上昇率なのに、1%しか上がらない銘柄もあるんだよな。
なら日経インデックスの方がはるかにマシ。インデックスなら個別リスクも無いしねー。
ということは、朝倉さんにとっての最低限期待する水準は日経平均の3%ってことですか?

アキ

トレーダー朝倉

まあそうだね。
本当はもっと高いけど、個人的に思う最低限は日経平均

トレーダー朝倉

市場平均以下なんて、個別リスクもあるしリターンも無いしで、ク○銘柄
(相変わらずハッキリ言いますね……)

アキ

個別リスクとインデックス投資の話はこちらの記事をどうぞ。

ウォール街のランダム・ウォーカー 【投資の真実】ウォール街のランダム・ウォーカーの要約・書評。初心者投資家こそ読んでほしい冷静な忠告本。

アナリスト村田

最低限の期待する株主還元の水準と日経平均(市場平均)の関係はとても重要なので、あとで詳しく……。

CAPMとエクイティスプレッド

このリターンとコストの差を示す指標がエクイティスプレッドです。

エクイティスプレッド=ROE-CAPM

エクイティ・スプレットとは、ROEからCAPMを引いた数値です。
ROEとCAPMの差は、投資家の最低限の期待を上回り、「株主にどれだけの超過利益をもたらしてくれたのか」を示す指標です。

アナリスト村田

エクイティ・スプレッドは絶対にプラス……
つまり、ROEは絶対にCAPMを上回らなければなりません……。

考えれば当然のことで、資金調達するための費用を上回る収益を上げられていないのであれば、投資家にとってその企業は何の価値も生み出していないことになるからです。

トレーダー朝倉

エクイティスプレッドが高ければ高いほど、その企業は多くの価値を生み出しているんで投資家にとってもいい銘柄だな。
よくわかりました……!

アキ

CAPMの式と計算

アナリスト村田

ではここからは、CAPMの式と計算方法を解説します。

CAPMは、ファイナンス理論で説明することができます。

村田さんの得意のファイナンスですね、ワクワク!

アキ

アナリスト村田

細かい計算は必要ないから概要だけを知りたいという方は、
「株主資本コストという、会計だけでは現れない資金調達コストがある」
ことさえ押さえていただければよいと思います。

 

重要! CAPMの式

CAPM=リスクフリーレート+βi×マーケットリスクプレミアム(%)

すみません、
ワクワクとか言いながらぜんぜん分かりません!(笑)

アキ

トレーダー朝倉

好奇心旺盛なのはいいことだな(笑)

CAPMの3つの要素

アナリスト村田

CAPMの式の3つの要素について、順番に解説しますのでご安心を……。
ありがとうございます!

アキ

CAPMとリスクフリーレート

アナリスト村田

リスクフリーレートは「ノーリスクで儲けられるようなものに投資した場合、利益率はどれくらいだろうか」というものです。
先ほどの朝倉君のように、投資家はわざわざリスクを取って企業に投資をするのに、ノーリスクでの利益率よりも高いリターンがなければその企業に投資をする意味はありません。

「ク○銘柄」って言ってた話ね……。

アキ

一般的に、最も安全な資産は日本国債と思われています。
これは元本割れもないし、信用リスク(貸し倒れリスク)もないということです。

そこで、10年物国債の利回りがこのリスクフリーレートにあてがわれます。
2016年12月23日時点では、0.055%です。
これだけ安く資金調達できるなんて企業はありがたいですね。

CAPMとベータβi

アナリスト村田

βi(ベータ)は、個別企業(i)のリスクです。
いきなりα(アルファ)じゃなくてβ……?!

アキ

アナリスト村田

いきなり見慣れない文字が出てきてひるむかもしれませんが、中身は簡単です。

アナリスト村田

市場平均のような1つのモデルをα、そうでは無い個別をβと言っているだけです……
あ、そういうことですか。(ホッ)

アキ

アナリスト村田

リスクとは企業の株価のデータから、どれだけボラティリティ(値動きの変動幅)があるかによって決まります。

市場全体(TOPIX)のボラティリティ平均は1で、もしボラティリティが1<βなら高リスク、1>βならば低リスクです。

トレーダー朝倉

「リスクが高い分だけ、リターンをよこせ」というわけだな!

企業としてはβが低ければ低いほど、資金調達は有利です。

トレーダー朝倉

ソフトバンクやDeNAのような成長する注目銘柄はボラティリティが高いので、βは高くなる傾向がある。

日用雑貨や食品業界などはディフェンシブ銘柄、つまり守りに強いということさ。
それほど業績が変わらないので株価の変動も少なく、βは低くなる傾向がある!

アナリスト村田

ちなみに……
βは過去の株価データさえあれば、エクセルの「共分散」によって求めることができます。

CAPMとマーケットリスクプレミアム

アナリスト村田

マーケットリスクプレミアムは、市場全体のリスクとリターンです。
マーケットリスクプレミアムは市場全体(TOPIX)の期待リターンから、リスクフリーレートを引いて求められます。

これは何を意味するかというと、そもそも個別の企業に投資をするのではなく、市場全体投資した時に最低限これだけは期待したいリターンのことです。

アナリスト村田

これも繰り返しですが……

市場へ投資するのはリスクがあります。
リスクフリーレートの目安である10年物国債に投資すればノーリスクで利回りを得られます。
つまり、「わざわざリスクを取って株式に投資する以上、リスクフリーレートに比べてこれだけのリターンは欲しい」ということです。

トレーダー朝倉

ハイリスクハイリターンは、ローリスクローリターンは基本!
だんだん分かってきました……!

アキ

インデックスがリスクの指標に

アナリスト村田

ここで少し市場平均とはインデックスについて詳しく……
市場全体の動きに連動する投資商品は存在します。
「日経225」「日経インデックス」などを聞いたことがあるかもしれません。

これは、放っておいても日経平均が上がればそれに連動して上がり、下がれば同じく下がるというものです。
投資家は、利回りの保証されている10年物国債と比べて、これをリスクと考え、リスクプレミアムを要求します。

基本的に株式に投資する以上高いリスクは避けられません。
市場全体のリスクは個別企業の努力ではコントロールすることができません。

アナリスト村田

しかし、市場全体が高いボラティリティ(リスク)だとしても、βi×マーケットリスクプレミアムとなっておりβiの個別リスクを減らせられれば、CAPMも減らすことができます。

トレーダー朝倉

株価がそんなに動かない銘柄なら、投資家は予想がしやすいから株価変動のリスクも比較的小さい。
だから、リスクの上乗せも少なくて株主への還元は少なくてもすむというわけだな。

CAPMを計算する

実際のケースを考えましょう。
2016年12月時点で10年物国債の利回りは0.055程度です。

トレーダー朝倉

ところで村田さん、証券会社ではマーケットリスクは何パーくらいっすか?

アナリスト村田

マーケットリスクは実務では過去70年で4~6%あたりで使うことが多いです……。
そして、ボラティリティがごく平均的な企業でβを1と考えます。

アナリスト村田

ただし、マーケットリスクは時代や市場環境によって変わるものなので、普遍的な数値はないというのも注意です……。
CAPM=0.055%+1×4~6%
=4.055~6.055%

これが、最低限株主が求めるリターンの水準です。

ってことは、リターンを意味するROEは、必ずこれを上回らなければ朝倉さんに怒られるってことですね?!

アキ

アナリスト村田

そういうことです……。

トレーダー朝倉

悪者にするな!(笑)

もし10年物国債の利回りや、市場のリスクが変動したら、企業もそれに応じて利益水準を高めなければなりません。

CAPMと投資の注意点

トレーダー朝倉

ここまでCAPMの計算方法について説明してもらいましたが、
村田さん、ちょっといいですか?

アナリスト村田

なんなりと。

トレーダー朝倉

このCAPMって、一見なるほどとは思うんですけど。。
でも、短期的に状況で変わるなら投資家も企業もそれに振り回されるのはどうかなーと思うんですよね。
たしかに……。

アキ

トレーダー朝倉

僕みたいに市場平均とかさえオーバーしてれば投資対象になる投資家もいるわけですし、一所懸命CAPMの計算に時間かけるなら、少しでも多くの銘柄を探したいなーとも思うんすよね。

アナリスト村田

さすが鋭いです……ね。
実は私も実務時代、ずっとその思いで悩んでいました……。
(え、こんな冷静沈着なロボットみたいな村田さんでも悩むことなんてあるんだ!)

アキ

アナリスト村田

ではCAPMは、経営者や投資家にとって必ず必要なのでしょうか。
私の考えでは、「使い方次第」だと思います……。

CAPMの絶対値

CAPMやROEやエクイティスプレッドは頭の良い人たちがファイナンス理論を駆使してもっともらしくリスク、リターンの関係を体系づけたものです。

アナリスト村田

一見、「なるほど」とは思いますが……
現実はそれほど鮮やかに割り切れるものではありません。

たとえばβひとつとっても、ファイナンス理論ではリスクを株価の変動幅として考えています。
普通の人が考えるリスクとは違います。

アナリスト村田

アキさんなら「リスク」と聞いた時何を思い浮かべますか?
それは……会社が不祥事を起こしたり、経営で行き詰まったり、事故が起こったりなどのアクシデントですかね。

アキ

アナリスト村田

それが普通の感覚です……。通常、株価の変動幅(ボラティリティ)とは考えないはずです。

トレーダー朝倉

まあそうっすよね。
「株価が激しく変動するから、リターンも多くよこせ」とか「株価がそれほど動かないならリスクは少ない」って確かに頭ではわかるけど、僕の場合、そもそも長期保有の銘柄なら短期のボラティリティは全く見ないこともありますね。
なるほど……。
だとするとCAPMのβが意味無いってことになる。

アキ

アナリスト村田

また、もうひとつ。
リスクフリーレートを10年物国債の利回りとしてあてがっていますが、本当に10年物国債はノーリスクなのでしょうか?

トレーダー朝倉

まあ一部の金融タカ派の経済学者は国債の暴落リスクなんてことも言ってますしね。
僕はあまり信じてないけど(笑)

少し調べるだけでたくさん出てきます。

 

CAPMの計算自体、確固たる方法があるわけではありません。

アナリスト村田

私は先ほどCAPMの目安が4〜6%と言いましたが……
CAPMを厳密に計算しようと、国債の評価や株価のボラティリティの比較などにいくら労力をかけても、最終的にCAPMは人の経験則と勘に左右されます。

間違った問いからは、間違った答えしか生まれません。

トレーダー朝倉

計算方法は正しくても、前提が間違っていれば「正しく間違う」ことにもなるよね。

 

アナリスト村田

それだけではありません……

CAPMの注意点は、自社の稼ぐ力が同じままでも、10年物国債利回りが低下したり、市場に比べて自社の株価のボラティリティが下がるだけで、CAPM(調達コスト)が下がって、良い企業に見えてしまいます……。

 

自己資本比率を下げれば稼ぐ力が同じでもROEが高くなるのと似ています。

トレーダー朝倉

僕は資本コストは参考までに、経営者はむしろ企業の収益力や資産価値の向上に時間をかけて欲しいし、投資家としては企業価値の評価に時間をかけたい派だね。

アナリスト村田

念のため付け加えておくと……

「CAPMの概念が重要でない」と言いたいわけではありません。
資金を調達するのに支払利息や株主還元などの当然コストはかかり、それを上回る利益を上げなければ企業は成長できません。

その意味ではROEとCAPMの比較は重要なのです。

アナリスト村田

実際、世界的投資家のバフェットも「バフェットからの手紙」と出資者へのレポートの中で、このようなことは頻繁に述べています。

CAPMは目安

じゃあ、村田さんが思うCAPMって何ですか?

アキ

アナリスト村田

私が思う大切なことは、投資家なら「数ある投資先の中でわざわざ特定の企業を選ぶのだから、相応のリターンが得られる企業に投資しよう」という基本的な心構えだと思います。

アナリスト村田

企業経営者なら、数ある投資先の中でわざわざ我が社を選んでくれたのだから、せめて他社に負けないリターン還元できるよう経営努力しようと考えることだと思います。

その目安が、ROEとCAPMの関係です。

CAPMは、投資して大きな機会費用を損してしまったと思わないための、最低限の目安として、それ程重く考えないことです。

アナリスト村田

ファイナンス理論を使ってきた私が言うものおかしいですが……
正しいかどうかわからない式を一所懸命完成させるよりも……

アナリスト村田

より確かなこと、朝倉さんの言うように、企業の稼ぐ力を見極めることが大切なのかもしれないですね……。
村田さん、カッコいい……!

アキ

トレーダー朝倉

あれ、僕は?
CAPMまとめ

1 CAPMの式

CAPM=リスクフリーレート+βi×マーケットリスクプレミアム(%)

2 CAPMの意味

投資家が企業に投資をするとき、「最低限必要な株主還元」のこと。

アナリスト村田

日本企業のCAPMの目安は4〜6%と考えておけばいいでしょう……。

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