CAPM(資本資産評価モデル)を計算式とベータでわかりやすく解説

このページでは、CAPM(Capital Asset Pricing Model|資本資産評価モデル)について解説しています。

ROEとの関係もくわしく解説します。

どちらも企業価値を測るうえで、とても重要な指標です。

CAPM=リスクフリーレート+βi×マーケットリスクプレミアム(%)

CAPM(資本資産評価モデル)の意味

まずは「CAPMとは何か」です。

CAPMは資金調達コスト

CAPM(Capital Asset Pricing Model|資本資産評価モデル)とは、「株主からの出資に対して、どのくらいの株主還元をしなければならないのか」を測るモデルです。

還元分は「資金調達のコスト」と言い換えることができます。

企業は資金調達をするとき、1 株主からの出資か、2 銀行や社債などの負債の2通りの方法があります。

負債であればわかりやすく、調達コストは利息です。
出資(株主資本)の場合、配当や自社株買いなどの株主還元がコストです。

つまりCAPMとは、「株主からの出資を得るための資金調達コスト」=「株主に対して支払わなければならない還元分」を計算するためのモデルです。

純利益は株主に帰属するのもののため、ある程度は株主還元に回すことが期待されています。

株主からすれば、日経平均や10年物国債など他の投資先であれば安全に利益を得られます。
それなのにわざわざリスクをとって特定の銘柄に投資しているのですから、当然他の銘柄を上回るリターンをあげられなければ意味がありません。

CAPMはこの「最低限このくらいは必要だと期待されているリターン」資金調達のコストと考えるモデルです。

CAPMとROE

ROEとは、株主資本に対する当期純利益ですので、株主にとってのリターンを表わす、最も基本的な指標です。

しかし、ROEはリターンとコストのうち、リターンのみですので株主利益の一面にしかすぎません。
CAPMはコスト側です。

ROE=当期純利益/株主資本

ROEは「資本をどれだけ効率的に純利益に結びつけているのか」という点で、非常に便利で役に立つ指標です。

しかしそれだけでは不十分です。

その利益を得るために投入した資金を「調達するためのコスト」(=CAPM)も考えなければなりません。

CAPMと収益

投資はコストとリターンを比べてこそ収益率がわかります。
企業価値を高める方法には2通りしかありません。

収入を増やすか、費用を抑えるかのどちらかです。

ROEは収入面での指標ですが、費用の面も測る必要があります。

企業が事業活動をすることで、いくら莫大な利益を生み出すとしても、コストを上回っていなければ意味がありません。

原価割れのものはいくら売っても赤字なのです。
還元要求がすさまじいのに、わずかなROEでは良い投資先ではありません。

株主が求めるリターンが10%なのに、5%の成果しか上げられなければ投資としては損です。

企業価値を向上させるには、コストを考えなければなりません。

コストはCAPMで求められます。

CAPMとROEをセットで使う

これが良い投資です。

CAPMとエクイティスプレッド

今の話を表す指標がエクイティスプレッドです。

エクイティ・スプレットとは、ROEからCAPMを引いた数値です。
ROEとCAPMの差は、投資家の最低限の期待を上回り、「株主にどれだけの超過利益をもたらしてくれたのか」を示す指標です。
エクイティ・スプレッドは絶対にプラスである必要があります。

つまり、ROEは絶対にCAPMを上回らなければなりません。

考えれば当然のことで、資金調達するための費用を上回る収益を上げられていないのであれば、投資家にとってその企業は何の価値も生み出していないからです。

「エクイティスプレッドが高ければ高いほど、その企業は多くの価値を生み出している」ことになります。

エクイティスプレッド=ROE-CAPM

CAPMの式と計算

CAPMの式と計算方法を解説します。

CAPMは、ファイナンス理論で説明することができます。

細かい計算は必要ないから概要だけを知りたいという方は、「株主資本コストという、会計だけでは現れない資金調達コストがある」とだけを押さえていただければよいと思います。

CAPMの式

CAPM=リスクフリーレート+βi×マーケットリスクプレミアム(%)

CAPMの3つの要素

上の式にあるCAPMの3つの要素について、順番に解説します。

CAPMとリスクフリーレート

リスクフリーレートは「ノーリスクで儲けられるようなものに投資した場合、利益率はどれくらいだろうか」というものです。
投資家はわざわざリスクを取って企業に投資をするのに、ノーリスクでの利益率よりも高いリターンがなければその企業に投資をする意味はありません。

一般的に、最も安全な資産は日本国債と思われています。
これは元本割れもないし、信用リスク(貸し倒れリスク)もないということです。

そこで、10年物国債の利回りがこのリスクフリーレートにあてがわれます。
2016年12月23日時点では、0.055%です。
これだけ安く資金調達できるなんて企業はありがたいですね。

CAPMとベータβi

βi(ベータ)は、個別企業(i)のリスクです。
いきなり数学のような数字が出てきてひるむかもしれませんが、中身は簡単です。

リスクとは企業の株価のデータから、どれだけボラティリティ(値動きの変動幅)があるかによって決まります。

市場全体(TOPIX)のボラティリティ平均は1で、もしボラティリティが1<βなら高リスク、1>βならば低リスクです。
「リスクが高い分だけ、リターンをよこせ」というわけです。

企業としてはβが低ければ低いほど、資金調達は有利です。

ソフトバンクやDeNAのような成長する注目銘柄はボラティリティが高いので、βは高くなる傾向があります。

日用雑貨や食品業界などはディフェンシブ銘柄、つまり守りに強いということですが、それほど業績が変わらないので株価の変動も少なく、βは低くなる傾向があります。

βは過去の株価データさえあれば、エクセルの「共分散」によって求めることができます。

CAPMとマーケットリスクプレミアム

マーケットリスクプレミアムは、市場全体のリスクとリターンです。
マーケットリスクプレミアムは市場全体(TOPIX)の期待リターンから、リスクフリーレートを引いて求められます。

これは何を意味するかというと、そもそも個別の企業に投資をするのではなく、市場全体投資した時に最低限これだけは期待したいリターンのことです。

市場へ投資するのはリスクがあります。
リスクフリーレートの目安である10年物国債に投資すればノーリスクで利回りを得られます。
つまり、「わざわざリスクを取って株式に投資する以上、リスクフリーレートに比べてこれだけのリターンは欲しい」ということです。

インデックスがリスクの指標に
市場全体の動きに連動する投資商品は存在します。
「日経225」「日経インデックス」などを聞いたことがあるかもしれません。

これは、放っておいても日経平均が上がればそれに連動して上がり、下がれば同じく下がるというものです。
投資家は、利回りの保証されている10年物国債と比べて、これをリスクと考え、リスクプレミアムを要求します。

基本的に株式に投資する以上高いリスクは避けられません。
市場全体のリスクは個別企業の努力ではコントロールすることができません。

しかし、市場全体が高いボラティリティ(リスク)だとしても、βi×マーケットリスクプレミアムとなっておりβiの個別リスクを減らせられれば、CAPMも減らすことができます。

CAPMを計算する

実際のケースを考えましょう。
2016年12月時点で10年物国債の利回りは0.055程度です。

マーケットリスクは実務の方に聞くところによると過去70年で4~6%と聞きました。
そして、ボラティリティがごく平均的な企業でβを1と考えます。

CAPM=0.055%+1×4~6%
=4.055~6.055%

これが、最低限株主が求めるリターンの水準です。
ROEは、必ずこれを上回らなければなりません。

もし10年物国債の利回りや、市場のリスクが変動したら、企業もそれに応じて利益水準を高めなければなりません。

CAPMと投資

ここまでCAPMの計算方法について説明してきました。
これは、バリュー投資家を目指す場合でも必ず必要なのでしょうか。
私の考えでは、「使い方次第」だと思います。

CAPMの絶対値

そもそも、CAPMやROEやエクイティスプレッドは頭の良い人たちがファイナンス理論を駆使してもっともらしくリスク、リターンの関係を体系づけたものです。
一見、「なるほど」とは思いますが、現実はそれほど鮮やかに割り切れるものではありません。

たとえばβひとつとっても、ファイナンス理論ではリスクを株価の変動幅として考えています。
私たちが一般的に考えるリスクとは違います。

「株価が激しく変動するから、リターンも多くよこせ」
「株価がそれほど動かないならリスクは少ない」

とは言うものの、そもそも長期保有を目指すバリュー投資家からすれば、短期的な値動きはそれほど重要ではありません。

また、リスクフリーレートを10年物国債の利回りとしてあてがっていますが、本当に10年物国債はノーリスクなのでしょうか?

CAPMの計算自体、明確な答えがあるわけではありません。
CAPMをいかに正確に計算しようとしても、それは不可能です。

CAPMを厳密に計算しようと、国債の評価や、株価のボラティリティの比較などにいくら労力をかけても、正確なCAPMが出せるとは限りません。

間違った問いからは、間違った答えしか生まれません。
計算方法は正しくても、前提が間違っていれば「正しく間違う」ことにもなりかねません。

CAPMの注意点は、自社の稼ぐ力が同じままでも、10年物国債利回りが低下したり、市場に比べて自社の株価のボラティリティが下がるだけで、CAPM(調達コスト)が下がって、良い企業に見えてしまうことです。

自己資本比率を下げれば稼ぐ力が同じでもROEが高くなるのと似ています。

分からないものに投資せず、分かるときにだけ投資をするというのがバリュー投資家が勝てる理由です。
私は資本コストは参考までに、むしろ企業の収益力や資産価値の評価に時間をかけるべきだと思います。

「CAPMの概念が重要でない」と言いたいわけではありません。
資金を調達するのに支払利息や株主還元などの当然コストはかかり、それを上回る利益を上げなければ企業は成長できません。

その意味ではROEとCAPMの比較は重要なのです。
実際、バフェットも「バフェットからの手紙」と出資者へのレポートの中で、このようなことは頻繁に述べています。

CAPMは目安

私が思う大切なことは、「数ある投資先の中でわざわざ特定の企業を選ぶのだから、相応のリターンが得られる企業に投資しよう」という基本的な心構えだと思います。

企業側は、数ある投資先の中でわざわざ我が社を選んでくれたのだから、せめて他社に負けないリターン還元できるよう経営努力しようと考えることだと思います。
これは当然のマナーだと思います。

その目安が、ROEとCAPMの関係です。

CAPMは、投資して大きな機会費用を損してしまったと思わないための、最低限の目安としてそれ程重く考えないことです。
とりあえずCAPMは今の日本では4~8%程度と考えておけばよいと思います。

正しいかどうかわからない式を一所懸命完成させるよりも、より確かなこと、「企業の稼ぐ力」を見極めることが大切です。

CAPMまとめ

1 CAPMの式

CAPM=リスクフリーレート+βi×マーケットリスクプレミアム(%)

2 CAPMの意味

投資家が企業に投資をするとき、「最低限必要な株主還元」のこと。

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