会計用語「進行基準」は東芝不正会計に使われた

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このページでは、東芝不正会計を参考に、会計の「工事進行基準」を解説します。

会計は経営者の意図が入り込み、恣意的に操作しやすいものです。
この「工事進行基準」も、あいまいでごまかしの対象になりやすいので注意が必要です。

東芝の不正会計のケースを取り上げ、いかに東芝が監査人の目をごまかしたのかを明らかにします。
これは私も調べてみて、「会計のできること」「できないこと」を知るという点で、投資判断の参考になりました。

工事進行基準―東芝が粉飾に利用

工事進行基準は、大企業などで大きなプロジェクトの時に使う考え方です。
普通、ビル建設などの工事はビルが完成して、発注者が現物を確認してから引き渡します。
引き渡しが無事に済んでから、工事代金を支払います。

しかし、発電所、水道、通信設備、など、もし長期にわたる工事であれば、施工会社は建設にかかる費用を現金で払い続けるのに、代金の受け取りが先なのでその間は自前の資金を持ち出さなければなりません。

これでは資金繰りが苦しくなります。

国土交通省のガイドラインでは、長期にわたる工事であれば、受注者は前払金や部分払金を支払うことが望ましいとはっきり書かれています。

国交

(引用)国土交通省HP「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン)」2011.8

これと同じような考えが、工事進行基準です。

たとえばビル建設工事は10年間で受注額が100億円、費用が50億円ならば、10年後の引き渡しの時にまとめて売上高と費用を計上するのではなく、売上高を10年間毎年10億円ずつ、費用を毎年5億円ずつ計上するということです。

あるいは、毎年10%づつ順調にいくとは限らないので、5%しか進捗できなかった年があれば、その期は売上高5億円を計上する、という考えです。
同時に、費用も計上します。

なるほど、これはたしかに納得できる考えです。
工事の実際の進捗に合わせて売上高が計上されるのですから。

しかしいろいろな問題も含んでいます。

あいまいな基準

たとえば、工事は毎年10%ずつ進行するとは予定していても、本当に予定通りに進むかどうかはわかりません。
5年目まで50%進んでいたと思ったが、「実際は40%までしか進んでいなかった」ということもあります。

道路を敷設していく工事ならば完成と未完成の部分の長さを計ればよいので分かりやすいのですが、ビルの建設だとそうはいきません。

10階建ての5階まで完成したから、完成の50%だという単純な話ではありません。
工事が正確にどのくらいの進捗状況なのかを判断するのは監査のプロでも難しいのです。

これは、何を意味するのでしょうか。

実際は5年目で40%の完成度だとしても、会社の予定通り50%だと言われてしまえば、そのまま会計も累計売上高を50億円で費用を25億円としてしまう可能性があるということです。

実際はまだ40億円相当しか進んでおらず、費用はこれに追加でかかる可能性があるのにもかかわらず。

ビルの建設でも判断がこれだけ難しいのに、ソフトウェアの開発のような、プロが見ても進捗度合いが分かりづらいようなものだと、実質的に会計で企業の実態を見抜くことは出来ません。

東芝の不正会計は、まさにこのケースでした。

東芝は会計の脆さを利用し、売上高の嵩増しと、費用の先送りをしたのです。

このような粉飾を外部から見抜くことは難しいですが、「見抜けないものは見抜けない」と開き直るのも手です。

情報その中でも、比較的ごまかしがきかないような信用できる情報を頼りにすることです。

たとえば車の販売台数などはごまかせません。

信用できる情報から企業の姿を見抜くにはやはり、経験とリテラシーが必要です。

(参考)「会計士は見た!」 前川修満著 文芸春秋社 2016.1.25

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