このページでは、DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)を使って理論株価を計算する方法を解説しています。
不動産や債券の収益計算に応用することもできます。
DCF法は将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いたものの合計で、理論株価や債券価格を計算する時に使います。
債券なら利子が確定しているため計算しやすいのですが、株式の場合は配当金が毎年同じとは限らないため、いくつかのモデルに当てはめて計算する必要があります。
そこで、「成長モデル」を使って、理論株価の計算もしてみます。
- わかりやすいDCF法の計算方法を知りたい
- DCF法で理論株価を計算するプロセス
- 割引計算とNPV(正味現在価値)
などを解説します。
目次
DCF法とゼロ成長モデル計算
DCF法で計算するゼロ成長モデルを解説します。
ゼロ成長モデルは、企業が全く成長せず「毎年稼ぐキャッシュフローが永遠に一定」の場合の理論株価を計算する方法です。
黒字ではあっても、毎年の現金収入の額が全く増えないし減らないということです。
初年に50を投資し、翌年からずっと10のキャッシュフロー収入があります。
割引率を3%と設定すれば、今の理論株価は
2年目=10/(1+0.03)^2=9.43
3年目=10/(1+0.03)^3=9.15
・・・
と10年目まで計算していき、
下のエクセルのようにDCF法でディスカウント計算をしていきます。
=28.46
理論株価は28.46となります。
電力、水道、石油などのインフラ企業、あるいは人口に応じて需要が常に一定の食品、日用品業界などにこのような傾向が見られます。
DCF法で計算する森永乳業
下は、森永乳業のここ10間の売上高です。(利益ではありません)
食品業界は明治グループをトップに企業が乱立しています。
食品業界は、景気に応じて売り上げが変わることが少ないです。
人の食べられる量は決まっていますし、食べなければならない量も決まっています。
また、日本の人口はここ数十年横這いなので、需要が急激に変わるとは考えられません。
必要な作業工程はほぼ決まっており、イノベーションによって、コストが大幅に下がることも考えられません。
売上高は非常に安定しており、営業利益も比較的緩やかです。
ゼロ成長モデルでは、森永乳業のように成長もせず、また先細りもそれほどなさそうな企業に適用します。
ゼロ成長企業だと投資家は見越して株価は長年横ばいです。
ただし、2016年3月期には売上高が初めて6,000億円を突破する期待から、2015年頃から株価は上昇傾向にあります。
(参考)株価データサイト k-db.com|http://k-db.com/
DCF法と一定成長モデル計算
DCF法で計算する一定成長モデルを解説します。
一定成長モデルは、「企業が一定の速度で成長していき、毎年生み出すキャッシュの額もそれに応じて一定率で成長していく」というものです。
この成長は、企業価値を非常に押し上げてくれます。
今の資産が小さくても、直近のキャッシュが小さくても、株主の期待は大きくなります。
DCF法と大化け株銘柄
先に結論を言えば、DCF法で計算した結果、期待できるのは成長の余地がある中小株だということが言えそうです。
大企業でも成長を続けられればもちろん良いのですが、成熟した業界のトップ企業であれば、残念ながらこれから大きく成長するということは見込めなさそうです。
国内市場は人口が頭打ちで、需要の伸びも期待できないからです。
それが、日本の大企業が世界市場に打って出ている理由でもあります。
しかし、まだ成長の余地が残っている業界であれば、企業にもキャッシュフローを押し上げるチャンスが残っていることを意味します。
中小株が一定の人気を集めているのもこのためです。
初年に50を投資し、翌年からずっと10のキャッシュフロー収入があります。
ゼロ成長モデルとおなじく割引率を3%と設定すれば、今の理論株価は
2年目=10/(1+0.03)^2=9.43
3年目=10×1.1/(1+0.03)^3=10.07
4年目=10×1.1^2/(1+0.03)^4=10.75
・・・
と10年目まで計算していき、
下のエクセルのようにDCF法でディスカウント計算をしていきます。
=64.82
理論株価は64.82となります。
ゼロ成長モデルの場合、初年度の投資額が50で、2年目の10万円の収入までは同じでした。
しかし、理論株価は28.46と、成長がある場合と比べてたったの10年で倍以上の差がついています。
これほどまでに成長は企業価値に大きく影響するのです。
DCF法で計算する成長企業ニトリ
ニトリは30年連続で増収増益を達成してきた異例の企業です。
2012年では300店舗・売上高3,400億円だったのが、2030年には3000店舗・売上高3兆円を目指しています。
人口の増加は頭打ちの国内市場でも出店を加速しています。郊外の大規模店舗型だったのが、2016年には高島屋のような中高級志向の物件にもテナントとして入居するようになりました。
もちろん国内では家具市場のシェアトップで、アジア中心に海外にも出店体制を整えています。
ここ近年の業績を見てみましょう。
売上高の増加に連動して、営業キャッシュフローも増やしています。
既存店で生み出してくれるキャッシュが、また次への投資資金になるという好循環です。
似鳥昭雄会長が掲げる2030年ビジョンもあり、投資家の期待は厚くそれが株価にも表れています。
(参考)株価データサイト k-db.com:http://k-db.com/
DCF法と成長モデルまとめ
このように、成長モデルを使って理論株価を実際に計算してみることで、「成長は最強のバリュードライバー」の理由が実感できたのではないでしょうか。
注意点として、企業は成長すると考えて理論株価を計算してもよいですが、永遠に高成長を続ける企業はあり得ません。
初めの5~10年は高成長、その後は低成長、そして20年後以降はゼロ成長、といったパターンの計算も有効です。
- DCF法は将来のキャッシュフローを現在価値に割い引いて理論株価を計算する方法
- 「ゼロ成長モデル」はキャッシュフローがずっと一定の企業の理論株価
- 「一定成長モデル」はキャッシュフローが年々成長していく企業の理論株価
- キャッシュフローが成長していく成長の企業は、株価が大きく上がる
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