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【キリン具体例】減損会計とは。わかりやすい減損会計・減損損失の意味・仕組み。

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このページでは、会計の減損会計のしくみをやさしく解説します。

財務会計を学びたい方や企業価値評価をしたい方、ビジネスパーソンや投資家にも役立つ内容です。

意外と落とし穴があるのが会計のルールですが、この「減損」も実はあいまいです。

近年、ブラジル子会社で減損をしたキリンのケースを参考にします。

  • 減損の意味
  • 減損会計の仕組み
  • 減損損失とのれん
  • 減損処理の具体例(キリン)

減損会計の意味

減損とは、企業が抱えている資産のうち、資産価額を減らすことです。

減損会計の仕組み

身近な例を使って減損を理解しましょう。

たとえばずっと倉庫に眠っていて規格が古くもう売れる見込みのない在庫を、評価損として費用計上して無価値と見なしてしまうことです。

在庫は、バランスシートの「資産」の欄に計上されています。
それは将来売れば売上高を計上することができるので、在庫の価値は「将来の収益の見込み」と考えられます。

しかし、ライバル社が新しいタイプの製品を開発・販売して人気を集めたとなればどうでしょう。
誰もが「今自社で保有している在庫はもう売れないだろう」と考えます。

そのような場合、在庫は無価値になってしまいます。
仮にバランスシートに在庫を100円計上していたなら、20円、10円、0円などに、差し引かなけれななりません。

これが減損です。
価額100円の在庫が20円になったのなら、差額の80円が減損額です。

この分、バランスシートの総資産も減ることになります。

また、損益計算書では「特別損失」として、経常利益から引かれ、「当期純利益」の下押し要因になります。

これは在庫だけでなく、工場、建物、機械、知的財産、そして子会社に対してもあり得ます。

ちなみにこれは帳簿上の処理であり、実際に現金が動くわけではありません。

減損処理と問題

この減損の仕組みですが、勘の良い方ならある疑問がわくはずです。

  • 減損会計のタイミング
  • 減損金額の計算

上で解説したような在庫の評価損のようなケースなら、
在庫の価値がいつ減ったのか、どのくらい減ったのかある程度までは計算できます。

  • いつ→「ライバル社が新商品を販売して人気に火が付き、自社製品の在庫がもう売れないだろう」
  • どのくらい→「型落ち処分セールや廃棄などで得られる見込み額から逆算する」

しかし、工場、建物、機械、知財、買収した子会社などになってくれば、もっと複雑になってきます。

棚卸の時期などは経理部など在庫・設備の数、種類、状態、知財の資産性などキリがありません。
子会社の収益性も同じように常に正確に把握するのは大変です。

このような正しい資産価値の計算はそう簡単ではありません。

ですから、減損はどうしても会社側・経営者の裁量にゆだねられている部分があるのです。

東芝のウエスチングハウス、あるいはソフトバンクの買収したアーム社のような巨額ののれんなら多くの投資家の注目を浴びて、監査法人も経営者も資産評価に慎重になります。

しかし、多くの上場企業ではむしろ注目されていない項目の方が多いでしょう。

減損会計の処理

このように、減損は正しい額の判断が現実的に難しいため、最終的には経営者・監査法人の裁量が入り込みます。
しかも会計基準の枠内でです。

会計数値があいまいになる原因ですが、上場企業も投資家もこの事実をしっかり理解する必要があります。

減損会計の具体例キリン

減損をより理解するために、キリンHDの事例を使って解説します。

キリンのブラジル子会社で減損

キリンHDは2015年にブラジル子会社の減損を計上しました。
2011年にブラジルの清涼飲料・ビールメーカーのスキンカリオール社を買収していましたが、資源価格の低迷などでブラジル経済は打撃を受け、通貨安と消費が落ち込んだことなどから業績見通しが悪化し、減損に追い込まれました。

そもそもこのケースは、買収した時点で高すぎるのではないかと疑問がありました。
これは2011年時点の記事です。

本来約2000億円だったはずの買収価格が1.5倍の3000億円に跳ね上がり、買収をめぐり現地で裁判沙汰となった今回の統合劇。

「ありうるシナリオとして想定はしていた」(小林弘武・キリンホールディングス常務)というが、誤算続きの感は否めない。スキンカリオールの連結売上高は、2010年12月期時点で1437億円、総資産は2247億円、連結EBITDA(税引き前利益に減価償却費、支払利息、税金を加えたもの)は256億円である。対してキリンが買収に投じた金額はEBITDAの13倍に達する。

5~10倍が相場といわれるなかでは、「高い買い物」になった。業界内には、スキンカリオールのそもそもの“価値”に首をかしげる向きも多い。同社はブラジルのビール市場で確かに2位だが、シェアはわずか15%で、1位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ傘下のアンベブが60%という圧倒的なシェアを握っており、苦戦していた。

(引用)ダイヤモンドオンライン「誤算続きのスキンカリオール買収 真価問われるキリンの海外戦略」2011.11.11

キリン減損損失の時期と金額計算

そして2015年12月、減損処理に踏み切ります。

キリンホールディングス(2503.T)は21日、2015年12月期の連結最終損益が560億円の赤字(従来予想は580億円の黒字)になるとの修正見通しを発表した。1949年のキリンビール上場以来、初めての最終赤字となる。

子会社のブラジルキリンで2015年12月期に減損損失約1412億円が発生、約1140億円を特別損失として計上することが主因。

伊藤彰浩CFO(最高財務責任者)は会見で「現在、現地で減損テストを実施中だが、影響額が大きいため、ステークホルダーと少しでも早いタイミングで見通しを共有すべきと判断し、開示した」と述べた。

(引用)ロイター「キリンHD、上場来初の最終赤字へ ブラジル子会社の減損計上」2015.12.21

とあります。
あえてこの時期に発表したということは、別の時期に発表する選択肢もあるのです。

もちろん会計規則では、「発覚したら即座に」とあります。
しかし、即座にというのは経営者の判断によっても違います。

  • 一日遅れたらNGなのか?
  • 発覚というのは、額が明確に判明してからなのか?
  • 持ち直しの可能性が少しでもあればどうするのか?

減損会計とあいまいさ

このように、あいまいな点はキリがありません。
であれば、規制当局からのお咎めの基準もグレーにならざるを得ません。

この場合、キリンの経営者は早期に開示することを決断してそれは誠実な態度だと思いますが、仮にこれよりも遅くても、開示姿勢としては問題なかったかもしれません。

つまり、ある程度は選択肢の余地はあり、経営者は自分の選択を迫られているのです。

会計年度は1年ごとであり、減損のタイミングを恣意的に決められるのであれば、経営者が利益をある程度、操作できるということです。
当期利益だけを見ても、わからないことがあることの例です。

※「不正の温床になりやすい」と上で言ったものの、このキリンのケースは不正とは何の関係もないので念のため

減損会計と投資家

減損は突如現れる罠のように見えますが、買収した親会社や投資家はどのように対処すればよいのでしょうか。

減損損失と兆候

財務を読み解くコツは、わかることとわからないことをはっきり分け、信用できる情報をもとに判断することです。

減損は基本的に企業のタイミングで公表されるため、それがいつ、どのくらいの額になるかは一見予想は難しいものです。

しかし、キリンのケースの場合は兆候がありました。
それに気づいていれば、減損ショックから身を守ることができる可能性が高くなります。

たとえば紹介したダイヤモンドの記事にあったように、ブラジル子会社の買収は「高い買い物」を掴んだという印象がありました。

キリンは人口減少で縮小していく国内市場でいつまでも安住してはいられず、すぐにでも海外で収益の柱を育てたかったという焦りがあったことは事実だと思います。

そこで、約2億人という巨大な人口を抱え、まだ成長の余地があるブラジルに打って出ました。
下の図は2012年と2015年のキリンの組織図です。

2012年では海外酒類・飲料と、海外事業はひと括りでした。

しかし海外事業全体が大きくなるにつれて、2013年以降、「オセアニア綜合飲料」「海外その他綜合飲料」に分割され、ブラジルキリンは「海外その他綜合飲料」に含まれることになりました。
キリン組織図
しかしそこではアンハイザー・ブッシュ・インベブ系というシェア60%の最強の競合があり、スキンカリオールはわずか15%でした。

しかも少数株主と揉めた結果、買収額も吊り上がりました。

減損の予感

この時点で、高値掴み感はあります。
黄信号です。

もちろん、結果論ではありますが。

しかもさらにその後、ブラジル経済は失速し、売上高、営業利益ともに伸びが原則し、2015年には下落します。
下の図を見れば一目瞭然ですね。
キリンブラジル推移

別のページで説明している東芝の不正会計も、同様です。
会計でごまかせる部分はありますが、ごまかすことができない情報は必ずあります。

どこかに、兆候が現れます。
それを見抜くのが、投資家の仕事です。

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