【コラム】大手ITプラットフォーマー企業のビジネスモデルのメリットと課題

nikkei

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トレーダー朝倉

今日紹介するのはこの記事だ。

コンテンツに第3の革命 ネットフリックスCEO
【未踏に挑む】
既存産業を新たなものに置き換えていくディスラプター(破壊者)。映画やテレビの世界では米ネットフリックスがその代表例だ。インターネットによる動画配信ビジネスはコンテンツ産業のあり方を変え、米ケーブルテレビ業界の再編の呼び水にもなった。デジタル革命は何を壊し、何を創るのか。リード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)に聞いた。

2018/12/2 日本経済新聞

マイクロソフト、安定成長へ変身 時価総額、終値でアップル抜く クラウド集中が原動力

マイクロソフトの時価総額が11月30日、終値ベースでアップルを上回り、世界最大になった。企業のIT(情報技術)投資需要を取り込むべく、クラウド事業に経営資源を集中している。いまやIT投資は企業には「必需品」といえ、好不況にも左右されにくい。来年以降の米景気を不安視するムードも強まるなか、「不況耐性」の高いビジネスモデルが市場の評価を集めている。
2018/12/2付日本経済新聞

要点は、ネットフリックスはキャッシュベースでは赤字が続いているものの株価は好調で過去5年で10倍に、マイクロソフトは久しぶりにアップルを抜いて世界最大の時価総額になったということ。

巨大IT大手はFANGやGAFAなどと呼ばれている。
そのほか、マイクロソフトも加えると、巨人企業は以下の通り。

  • グーグル
  • フェイスブック
  • アマゾン
  • アップル
  • マイクロソフト
  • ネットフリックス

これらの企業はそれぞれ「IT企業」と括られてしまって同じように見えるかもしれないが、場を提供する「プラットフォーム型」と呼ばれるタイプと、自らの商品やサービスを売る実業型に分けられる。
そしてこれらは、実は根本的に違う。

今日はプラットフォーム型と、実業型の違いを、メリット・課題も合わせて紹介しよう。
そして日本のメルカリやラインはどちらを目指しているのかを分析する。

まず、先ほど挙げたIT企業が、どれがプラットフォーマーでどれが実業型かどうかわかるだろうか。

あえて単純化して分けると、プラットフォーム型は、この二社。

  • グーグル
  • フェイスブック

実業型企業はこの4社だ。

  • アマゾン
  • アップル
  • マイクロソフト
  • ネットフリックス
日本のラインやメルカリはどちらなのかは最後に紹介しよう。

どの企業もITを駆使している企業で、時価総額数十兆円規模で世界トップレベルだという共通点があるが、前者と後者は違う。順番に解説しよう。

プラットフォーム型企業の強みと課題

トレーダー朝倉

グーグルとフェイスブックは、プラットフォーム型だ。
ではプラットフォームとはどういうことか?

高品質なサービスを基本的に無料で提供し、不特定多数の企業や個人を大量に集めてマッチングをする。そしてユーザーが増えれば、広告掲載や一部課金をしたいという人も出てくる。

グーグルが検索、Gメール、マップなど信じられないような高機能のサービスを無料で開放しているのは、爆発的に普及させることで広告収入が見込めるからだ。フェイスブックも同じで、90%以上が広告収入で成り立っている。

プラットフォーム型企業のメリット

ではプラットフォームのメリットはなんだろうか?

検索エンジンやフェイスブックなどのサービスが完成すれば、あとは自動的にユーザーがユーザーを呼び、指数関数的に普及していく。集客に物理的な限界がない。

これが意味するのは、収入も利益もそれほどコストをかけずに爆発的に伸ばせるということだ。

例えば家電メーカーなら家電を作るために原材料費も製造費も物流費用かかる。
つまり変動費がかかる。

しかしITサービスなら物理的なハードルがないため、集客のための変動費がほぼ無料だ。
グーグル検索やフェイスブックに広告を出稿する際もフォームが自動化されているため、まさに収入が自動的に入ってくる仕組みだと言える。

また、どんなサービスも多くのユーザーを飽きさせないためにコンテンツを多く用意する必要があるが、プラットフォーム企業は場を提供すればクリエイターが勝手に集まってくるため、自ら製作するためのコストもかからない。

製造業がITサービス業の利益率を追い越しづらい理由はここにある。

製造業の経常利益率は10%に行けば優秀と言われる中、グーグルの経常利益率は30%ほど、フェイスブックは50%ほどだ。

プラットフォーム企業の課題は品質の管理

しかし、プラットフォーム企業ならではの課題もある。

それはコンテンツの質の管理が難しいということだ。
また、サービスの落とし穴を狙って不正に収入を得ようと企む人間を排除するのが難しい。

例えば、グーグルもフェイスブックも広告が大きな収入源で、基本的に広告は誰でも出すことができる。いちいち広告代理店に依頼するのは大手企業だけで、個人なら自分でバナーも文章も考えて出稿できる。

ということは、政治的な意図を持った内容や、不快な印象を与える広告などが出稿されていても、その管理が難しい。
特にグーグル傘下のユーチューブも典型的なプラットフォームサービスだが、今の所は動画の内容をコンピュータが理解できる訳ではないため、思想的に過激なコンテンツを必ずしも排除できるわけではなく、そのような動画にも大手企業の広告が意図せず掲載されてしまうことがある。

プラットフォーム企業とは、自動でユーザーが増え、コンテンツも増え、広告収入が増えていく仕組みだが、常識の範囲内のマッチングが難しいのが課題だ。

実業型サービス企業のビジネスモデル

では実業型の企業を見てみよう。

  • アマゾン
  • アップル
  • マイクロソフト
  • ネットフリックス
アマゾンのECサイトはユーザーと出品者を結びつけるプラットフォームの面もあるが、出品は匿名で誰でもできるわけではないし、購入もクレジットカード情報が必要なため、品質は担保されている。
また、アマゾンは他社では真似できないほどの赤字覚悟で物流網に投資をしてきたし、アマゾンはAWSというクラウド事業でシェアトップだ。これはプラットフォームの発想を超えた、実業の発想だ。

アップルは、ブランド力を武器にアイフォンという実物商品の販売で稼いでいる。
ビジネスモデルはメルセデスベンツやシャネルと同じ、ブランド企業だ。

マイクロソフトも広告収入ではなく、オフィスシリーズやクラウドなど自ら開発したソフト・サービスを提供するするビジネスモデルで稼いでいる。

ネットフリックスは、自前の映画コンテンツを作成するためにハリウッドの映画監督などクリエイターを高給で引き抜いて、わざわざコストをかけてコンテンツを作成している。
コンテンツを自動的に不特定多数の人に任せるフェイスブックやユーチューブのようなモデルとは明らかに一線を画している。

実業型企業のメリットとは品質

実業型サービス企業のメリットとは、品質の管理ができることだ。
単に悪質なものを排除するだけでなく、自らコンテンツ作成のノウハウも蓄積されていき差別化もできる。

アップルも、ブランドイメージを高めるためのマーケティングや商品開発など基幹部分は本社で引き受け、付加価値を生まない製造部分は台湾メーカーのホンハイに委託している。

マイクロソフトも研究開発やソフトのメンテナンス、アップデートを自社でまかない、販売は世界の現地法人や代理店に任せている。

最大の課題はコスト

一方で、コストがかかるというデメリットは避けられない。
新しいサービスを生み出すために商品開発のコストは必要だし、コンテンツやサービスは自社で責任を持って作成するため、マーケティングや品質確保も大切だ。

ウィンドウズなどのOSならダウンロード販売が無限にできるが、アイフォンの販売に関しては数量を納期までに製造して配送しなければならないという物理的な課題をクリアする必要がある。

ネットフリックスは、万人受けする映画は少ないので、世界展開するにはそれぞれの消費者セグメント毎に受け入れられるコンテンツを作らなければならない。

このように、品質管理やコンテンツ作成は結構大変だしコストもかかる。
プラットフォーマー企業はこのプロセスをある程度省くことができるため、利益率では実業よりも有利なのは否めない。

では、どちらが良いのか?

プラットフォーム型企業は、驚異的な利益を積み重ねている一方で、最近風当たりが強くなっている。

グーグルに関しては、不正ユーザーが広告システムを悪用して政治的な意図で主張を周知しようとするケースや、「アドフラウド」と呼ばれる不正に広告収入を搾取するケースが相次いでいて、問題化している。
P&Gやユニリーバなんかはネット広告の方針を大幅に見直す方針を表明して話題になった。

「Unilever CMO Says Marketers Must Take More Responsibility for Brand Safety」Wall Street Journal

特にフェイスブックは選挙や政治に影響を与える投稿をコントロールできなかったとして、トップが議会で追及を受けた。

プラットフォーマーは、ユーザーのコンテンツ投稿と閲覧が自動化できるため、爆発的に普及して利益も出やすいというメリットがあるが、品質の管理は目が行き届かないという限界に直面している。

メルカリも、出品も購入もユーザー同士が自由に行えるため、メルカリ本体はサービスの機能の充実に専念できて、社員人数は少なくても稼げるモデルだと思われていたが、規模が大きくなるにつれて、現金が出品されていたり、万引き転売の温床になったり、ユーザー同士のトラブルも絶えない。
そのようなトラブルを監視したり仲介するために、人員を増やしているというのだから、結局プラットフォーム企業であることのコストは高くついたことになる。

一方でネットフリックスや、マイクロソフトは自ら作ったコンテンツやソフトを、自らの責任で売り、自らの責任でメンテナンスやアップデートしていく。
もちろん初めからコストはかかるが、品質や倫理性は管理しやすいため、大間違いをしづらいという点は強みだ。

アマゾンも初めは巨額の赤字を積み重ねながら物流網を自ら構築するなんて、IT企業なのにおかしいと言われていたが、今や物流網が完成しつつある中では競合がいない状況になった。また、実業の発想の延長でクラウドサービスが大成功を収めている。

一番最初の記事に戻ると、ネットフリックスやマイクロソフトは、プラットフォーマー企業ではなく、あえて研究開発やコンテンツ作成に巨額の投資をしている。

「NEVERまとめ」で信頼性の薄い情報が大量に野放しになっていて、コンテンツが大量に削除され、DeNAのWELQが閉鎖されるという事件があった。
プラットフォーム企業は、「あくまでも場を提供しているだけで、内容に責任を負わない」というのでは通用しなくなってきている。

ということは、プラットフォーム企業は、「勝手に不特定多数の人が作成した悪質なコンテンツによって、自らの評判を落とすリスクをわざわざ増やしているようなものだ」とも言えるのではないだろうか。

最後にラインだが、これはSNSの代表格で、基本的に電話番号があれば誰でも使える不特定多数向けのプラットフォーム型のサービスと言える。

しかし、最近は決済サービスや金融サービスへも軸足を移そうとしている。
「キュレーションサイトまとめ問題」で風当たりが強くなったNEVERは、ラインの親会社だ。プラットフォームの魅力と限界を考え、実業に力を移そうとしているということだろう。

まとめ
IT大手企業は、プラットフォーム型企業と実業型企業に分けることができる。

 

プラットフォーム企業は、コンテンツやユーザーが自然増殖していき広告収入や利益が爆発的に伸びるというメリットがあるが、品質の管理が難しい。「場所を提供しているだけ」という言い訳は通用しない以上、そのビジネスはリスクと隣り合わせだ。

 

実業型企業は、自ら商品を作成しなければならないためコストがかさむ一方、質やコンテンツの管理ができるため、自らの力量次第でコンテンツを提供でき、また品質の維持ができる。

 

プラットフォーム型企業は、爆発的な利用者の増加で利益を積み重ねてきて時価総額を膨らませてきたが、近年は政治利用やデータの寡占で世間の風当たりが強くなってきている。

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